第29話私はマリア


私の名前は、マリア・リズ・リースレット。


リースレット王国の第一王女ですわ。




っていうのは、表の顔で〜


私の名前は美波穂希。


周りより少し出来ている女子高生、だった。



私が住んでいた地域は、毎年大雪が降る場所だった。


そんな雪のある日、スリップした車と衝突して、そのまま私は意識を手放した…。



そしたら!なななんと!



転生できちゃったのでーす!!!



いやぁ、あれはびっくりしたわぁ。


長い髭のおじいちゃん(神様)が出て来て、いきなり



【ワシの所為で悪かったのぉ】



なんて、いってくるんだから。


なんでも、私が事故に遭って、死んだのは神様の所為だったらしく、お詫びに好きな世界へ転生させてくれるらしかったの!


もうこの時点で私は転生先を決めていたわ。



転生先は、大人気乙女ゲーム




七色の祈り。




の、世界。



もちろん、ヒロインのマリア様に転生よ!



あの愛くるしく、可憐な容姿で、女神のような心で、アリュートもルーカスもパラメドもリジーラもルキも、アルディアもみーんな、みーんな、虜にしてあげるんだから!




ふふっ、ふふふふっ。あぁ、楽しみ、どんな生活が待っているのかしら。












と、楽しみにしていたはずなのに。



「ハレイ、頬っぺたにミズリがついてるよ」

「え、本当ですか?」

「取ってあげるよ」

「ありがとうございます。兄様」



何よ、これ。



「どうした?マリア、体調でも悪いのか?」

「気分が優れないようでしたら、医務室に」

「大丈夫です。心配してくれてありがとう」



何で、みんな私を見てくれないの?


愛されなきゃいけないのに。



私はマリアだもの。



愛されて当然。愛されなくてはいけないの。



ねぇ……アリュート、ルーカス、パラメド、リジーラ………ルキ、王太子殿下…。


どうして、私を「好き」な目で見てくれないの?

私、ゲーム通りにやったよ?



なのに、それなのに、どうして?



どうして、アリュートたちは私を“恋愛対象”としてみてくれないの?


どうしてパラメドたちは私を無視するの?



どうして、みんな、ハレイシアあいつのところへ行くの?





そう、そうだわ。あいつも転生者なのよ。


私の、ヒロインマリアの邪魔をしようとしているんだわ。



憎い。邪魔。嫌い。消したい。



でも、消せない。



なんでって、あいつらルキたちに邪魔されるんですもの。



おかしいわよね?


本来、恋人になるはずのアルディア・ルリ・カラロルが、ハレイシアの従者になってんのよ?



おかしい、おかしいわ。おかしすぎる。



きっと、アルディアは魔法にかけられて……


ううん、違う。


なんで私こんなこと考えてんだろ。



これじゃただの八つ当たりじゃない。



「ハレイシアちゃん」

「何ですか?マリアお姉様」



これは、私の小さな小さな、本当に小さな自己満足。



「私のパスタもあげるよ」

「本当ですか!?嬉しいです!」



たとえこの子が転生者だとしても、この子は



「ありがとうございます!マリア!」



私の可愛い妹なのだから。



私はマリア・リズ・リースレット。



リースレット王国の第一王女だ。



大好きなのは、六人目の妹。












「はい、あーん」

「あーん」


パクっ


「美味しいです!」

「良かったわ」


うふふ あはは


「…………(ゴフッ)」

「る、ルキ王太子殿下?」



姉妹の仲の良い様子を見て、あまりのキラキラオーラに、吐血しかけるルキ・メルディア・リースレットであった。

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