第27話お姉様って何なのかしら


カラーン カラーン カラーン


朝の日八つ半の鐘。



「こっち?」

「はい。そうです」



ハレイシアはララ、アミリアと共に、通路を歩いていた。



「あ、本当だ、ここに出る」

「近道でしょう?」

「流石ララちゃん」

「えへへ」



ハレイシアに褒められ、照れ臭そうにするララ。



「あ、わたくしたちはここで…」

「そうですね。二人も頑張って」

「「はい!」」



ハレイシアとララたちはクラスが違う。


ララは二属性特化型クラス、2教室。

アミリアは三属性特化型クラス、3教室。


綺麗に1、2、3、と並んでいる。



「それでは!」

「えぇ………さて、新しい先生はどんな先生かな」



ハレイシアの願い事はただ一つ。



モブらしく平穏に暮らしたい。











「はぁ…」



そういえば、まだマリア様や兄様たちに会って無いな。


いつ会えるのだろうか。



ガラッ


「おはようございます」



挨拶と共に入ってきたのは若い先生。

いや、リントン先生も若かったけどさ。


今度の先生は黒髪に緑の目をした女の先生。

まぁ、リントン先生も女だったけども。



「王族狂いのリーニア・リントンの代わりに来ました。レフィーネ・アルトズです」



レフィーネ先生ね。覚えたわ。


というか、王族狂いのリーニア・リントンって。面白いけど事実だから笑えないわ…。



「よろしくお願いします」


パチパチパチパチッ



とりあえず、みんな拍手。



「ありがとう。では早速授業を始める」



あれ、今の授業、何だっけ



「一時間目は歴史。この国、リースレット王国について学んでいく」



うわー、私スゲー当てられそう。



「まず初めに……ハレイシア・レイ・リースレット」

「はい」


ガタッ


「リースレット王国について話してみろ。」

「わかりました。リースレット王国はカトル歴5年、リストの月第15日に建国されました。初代国王の名はオズフェル・リズリス・リースレット。魔法の才能に満ち溢れた国王でした」

「そこまででいい」



あ、了解



「さて、この続きだが、次…」



あぁ、暇。

あ、ここ窓側の一番後ろだ。


眠い…寝、そう………








カラーン カラーン カラーン


「お疲れ様です」

「ミリナ様こそ」

「はっ」



はー、完璧に寝てた。



「でも、姿勢は崩れてないのね…」

「ハレイシア姫」

「あ、はい。何でしょうか」

「2教室の方が…」



女生徒が指差す先には、ドアの外から教室の中を伺っているララちゃんとアミリアちゃんがいた。


堂々と入ってきても平気なはずだよ?



「ありがとうございます」

「いえ、では」



女生徒は最後に軽くお辞儀をして、友人のところへ戻っていった。



「ララちゃん、アミリアちゃん」

「ハレイ様!」

「どうしたの?」



なんか、もやもやした顔してるけど。



「それが…」

「ハレイシアちゃん!」


バッ


「うわっ!?」



ま、マリア様!?



「マリアお姉様!?何故ここへ!?」

「ハレイシアちゃんに会いたくって」



満面の笑みでそんなことを言ってくるマリア様。


その後ろには



「その子がマリアの妹か…」

「アリュート王太子殿下…」



興味津々といった様子で、私を見てくるアリュート王子。



「あ、わかりました。昨日の魔法試験で倒れた子ですね?」

「うっ」



しれっと言って欲しくないことを言いやがるルーカス。



「ふーん。そうなんだ」

「どうも」



興味無さげに、こちらを見ようともしない、パラメド。



「マリアには遠く及ばない、極々普通の子ですね…」

「はい」



びっくりしたように、そう言うリジーラ。



「へぇ〜!お姫の妹かぁ〜!」

「あ、ははっ」



ニコニコと、無邪気な子供のように私を見てくるサンディー。



うっ、ほとんどの攻略キャラがここに集結している!

心臓にっ、悪い…。



「あ、紹介するね」



私の肩を抱き寄せながら、マリア様が言う。



「この子は私の妹のハレイシア。とても勉強が得意な子で、ダンスも上手なの。みんな、仲良くしてあげてね」



アリュートとルーカスが、マリア様を愛しいものを見る眼差しで見つめる。


今のところ、攻略できているのはこの二人だけなのかな?



「あ、よ、よろしくお願いします」

「あぁ、よろしくね」



皆を代表してなのか、アリュートが私にそう言ってくる。



「ハレイシアちゃん」

「はい」

「その子たちは?」



私の後ろにはララちゃんとアミリアちゃん。

そして、いつのまにか来ていたアメジストとアルディアがいた。



「紹介しますね。私の仕える者のララとアミリア。そして」

「侍女のアメジストです」

「執事のアルディアです」



お辞儀をする四人。


そっか、一応王族いるもんね。



「え、アル…」

「………ぁ」



ヤベェ、ヤベェヤベェヤベェヤベェ!!


マリアサンの目の色が変わった!!



「アメジストちゃん久しぶり。初めまして…アルディアくん」

「お久しぶりでございます。マリア姫」

「初めまして。マリア姫」



きっと、アメジストとアルは、気づいているはずだ。

マリア様の目の色が変わったことに。


二人なら、た、多分気づいてるはずだ…。



「マリアお姉様」

「…どうしたの?ハレイシアちゃん」

「お昼。一緒に食べませんか?」



青い顔を精一杯隠すように、笑顔を浮かべる私。



「え?良いの?」

「はい。皆さんもどうですか?」



流れで誘ってみる。



「じゃあ、お邪魔しようかな」

「そうですね」



ノリ気なアリュートとルーカス。



「アリュートとルーカスが行くなら僕も…」

「マリア様が行くのなら行きますよ」



本を抱きしめながらゆっくりと言うパラメドと、髪をなびかせながら、ナルシスト全開の笑みを浮かべるリジーラ。



「もちろん行くよ!」



心底楽しみだといった感じで、飛び跳ねているサンディー。


乗ってくれて良かった〜!



「その話。僕も乗って良いかな?」

《え?》



ん?誰、ぇえ?



「兄様?」

「ルキ王太子殿下…」



マリア様が、怯えてる??



「久しぶり。ハレイ」

「兄様。体調の方は大丈夫ですか?」

「あぁ、ハレイの手紙のおかげで大丈夫だったよ」



ぽんぽんっと頭を撫でてくれる兄様。


ちょいちょい、人前ではやめておくれよ。

結構恥ずかしいんだぞ。



「それで、昼食の件だけど」

「も、もちろんですわ!」



あ、珍しい。マリア様が“敬語のようなもの”を使っている。



「ありがとう。ハレイ、アメジストとアルディアも後でね」

「はい」



私が返事をして、アメジストとアルはお辞儀をする。



〈何なのよ…〉



こっちが聞きたいよ。



全く。お姉様って何なのかしら。

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