第26話起床から朝食


王立アカデミーの朝は結構早くから始まる。


朝食が朝の日六つ半の鐘から。

簡単に言えば、午前6時半から。



授業は朝の日八つの鐘から、昼の2の日三つの鐘まで。

簡単に言えば、朝8時から午後3時まで。



授業の時間帯は多分、前世の学校と変わらないと思う。

曖昧なのは、まだ記憶が全然戻ってないからだ。


今ある記憶はゲームに関しての記憶だけ。



「(いつになったら他の記憶も戻るんだろうなぁ…)」



寮の自室の窓から、明るくなりつつある空を見る。



現在の時刻、朝の日四つ。午前4時だ。


いつだったか、この時間帯にアメジストに起こされたことあったよな



「安眠妨害」

「何がですか」

「だからやめろつってんだろそれぇ!!」


ボフッ



試しに枕を投げてみる。脇に抱えてたんだよね。


ま、案の定避けられるが。



「早く着替えてください」

「まだ時間に余裕あるよね!?」

「髪のセットがあります」



あ、私、癖っ毛ですもんねー



「ほら、わかったのなら着替える」

「へーーい」

「はぁ」











「〜〜〜♪」

「何の歌ですか?」

「ん?これ?」

「はい」



なんだったっけな



「知らない」

「知らない!?」

「うん」


カタンッ



ちょいちょい、アメジストさんや、ブラシ落としてまっせ。



〈前まではちゃんと答えてたのに……〉

「ん?なんか言った?」

「いいえ、何も」



流石のアメジストも疲れが溜まってる?

休ませた方が良いかな?



カラーン カラーン カラーン



「もう朝の日五つ」

「早いですね」

「そーね」



でも、朝食までまだ一時間はあるのよね。



「本でも読んでるか」


コンコンッ


「誰?」

「さぁ…」


ガチャッ


「朝早くに失礼します」

「ララお嬢様、アミリアお嬢様」



え?ララちゃんたち、来ちまった系ですか?



「どうぞ」

「アメジストぉ!?」



待ってよ!私良いよって言ってないよ!?



「ハレイ様!失礼いたしますわ!」

「し、失礼しますわっ」



お、王女スイッチ、王女スイッチ



「ララ、アミリア、おはよう」

「「おはようございます!ハレイ様!」」



お、アミリアちゃんもハレイ様呼びになったか。


それ以外は特に変化無し。今のところは。



「朝早くからご苦労様です」

「ハレイ様の為なら、たとえ火の中水の中!何処へでも行きますわ!」

「そうですわ!」



そこまではしなくて良いよー、私が困るよー



「ありがとう。二人とも。では、今から一時間ほど、私の話し相手になってくださる?」

「「もちろんですわ!」」

「ありがとう」














食堂


「おはようございます。リナ様」

「おはようございますわ。トール様」



朝の日六つ半。食堂が挨拶戦争の場になる。


王立アカデミーに入りたての頃は、皆貴族のパイプ作りで忙しいのだ。



「あの、ハレイシア姫!」

「はい。あなたは?」

「昨日、あなた様の執事に助けられた者ですの。お礼が言いたくて」

「まぁ、それでわざわざ?」



如何にもなモブっ子が話しかけてくる。


まぁ、私もモブっ子なのだけど。



「これ、その時に借りたハンカチでございます!ちゃんと洗ってありますので!」

「わざわざありがとう」

「い、いえ、それでは!」



良い子だったな。



「今の…」

「ラストリア帝国から来ている、唯一の男爵令嬢ですね」



え、嘘、わかんの?



「パイプは持っていても損はないでしょう」



怖い。怖いわ…。私に仕える子たち、みんな有能過ぎて怖い。



「姫さま。お席の用意できました」

「ありがとう。アメジスト」



いつのまに?気配消してたよね、絶対。



「わぁ、日当たりのいい場所」



この辺は人も少なくて、自然もあって、最高だね。アメジスト、有能。



「姫さまたちは席についていてください。私とアルが頼んでまいります」

「じゃー、さっぱり野菜パスタ!」

「野菜パスタ、と」



あ、メモはしてくのね。


メモ係はアルディア、と。



「わたくしはハムのサンドウィッチで」

「ハムサンド」

「私は姫さまと同じ野菜パスタで」

「野菜パスタ」



ララちゃん一緒なのね。朝はさっぱり系が良いよね。



「では、行ってまいります」

「ゆっくりね。慌てないでね」

「わかっております」



本当かな。アル、結構焦る子だからな。



「ハレイ様はやはり、お優しい方ですね」

「そうですか?アメジストもアルも、家族のように見ているからかもしれませんね」

「素敵ですわ」



アミリアちゃんもうんうん、と頷いている。


とりあえず、この二人が仲良くなって良かった。



「二人は何を頼んでくるのかしら」



王立アカデミーの食堂の食事は、全て無料。ありがたいね。



「お待たせいたしました」

「早くない?」

「そうですか?」

「そうだよ」



パッと現れたアメジストに、即座にツッコミを入れる。



「アメジストー、待ってよー」

「アル、遅い」

「お前が早い」



この言い合い、どこかで見た気がするようなしないような。


いつだったっけな。



「(ま、いいか)…わぁ!」



野菜パスタ…超美味そう!


キャベツっぽいものと、水菜っぽいものと、ほうれん草っぽいもの。葉物野菜たくさんだ


いい匂いだし、これは絶対美味い!



「早速…いただきます」

「?、何ですの?それ」

「んぁ?あぁ、いただきますのこと?」

「はい」



そっか、ここではそーゆー習慣が無いんだ。


珍しいというより、何それって感じだよね。



「いただきますってのはね、食べ物に感謝して、いただくって意味…だったと思うよ」



前世じゃたしか、当たり前だったから、深く考えたことがなかったな。



「じゃあ、私も。いただきます」

「あ、わたくしも、いただきます」

「私もいただきます」

「僕も。いただきます」



みんなやるのね(笑)。



「じゃ、私ももう一度。いただきます」



野菜パスタ、攻略開始ぃ!





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