第23話自分が脇役ということを思い出す(後)


月の寮 ハレイシア自室


「あぁ〜!」



やっと一人になれた。


でもこの後、魔法試験があるんだよなぁ



「結構高得点狙えたりして…むふふ」



しばらく、そういうことを考えて、結論が出る。



「無理だな」



だって、私、あんまり魔力持ってないもの。

魔法の技術力だってそんなに無いし。


無理だね。



さて、荷解きをしよう。アメジストがしてくれるって言ってたけど、読みたい本があるんだもの。


それくらい、先に出したっていいよね?



ガタンッ


「おっ…もっ…」



持てなくはない。持てなくはないんだけれど重い。


アメジストたちをナメていた。


あいつら……裏で絶対筋トレしてるな。



「そうに違いない」

「何がですか」

「だからそれやめてってば!もぉー!!」



私はこれから何回、アメジストに驚かされなきゃならないわけ!?



「それで?何故、トランクを出しているのですか?」



あ、出た。最近出てなかった脅迫の笑み。



「本を読みたかったの」

「何の?」

「ほら、あれ、花のお姫様」

「あぁ、あれですか」



題名を言うと、納得したような声を出すアメジスト。


花のお姫様。

簡単にいえば、童話だ。幼児向けの。


花を咲かせることができる力を持ったお姫様が、冒険をする物語。


私とどことなく似ている。と思う。



「その本は後で出しておきます。それよりも召集がかかってますよ。早く下に降りたらどうですか?」

「うわっ、ホント?荷解きよろしく」

「了解しました」



もうそんな時間か。あっという間だったな。





玄関ホール


「ふぅ、良かった」



割と早い組に混ざれた。アメジストに感謝。



「は、ハレイシア姫様」

「?、あ、ララ様!」



私のお友達第一号(仮)!



「ふふっ、そんな堅苦しくしないで。ハレイで良いわ。姫も無し」

「は、はい!ハレイ様!」

「ありがとう」



ララ様は綺麗なオレンジ色の髪をしている。


オレンジの髪に赤い瞳。赤系統だなぁ。



「そういえば、ララ様はどのクラスですの?」

「私は二属性特化型クラス。2教室ですわ」

「私のお隣ですね」

「はい!」



ララちゃんめっちゃ良い子。

何この子、めっちゃ純粋。


キラキラオーラが目に見えるよ。



「あら、誰かと思えば、フィーラ公爵家の娘じゃないの」

「サナサ様…」



ん?誰?



「貧乏人同士、仲が良さそうですわね」



貧乏人?誰のことだ?



「あの、失礼ですが、誰ですか?」

「!?、は、ハレイ様!」

「誰?このアタクシのことを知りませんの!?」

「はい」



知らないな。あんたみたいなザ・悪役令嬢。



「アタクシの名前はサナサ・フォン・ソラファ。ソラファ公爵家の長女ですわ!あなたは?」



ソラファって、なんか、音みたいだな



「これは失礼いたしました。わたくし、リースレット王国第七王女、ハレイシア・レイ・リースレットと申しますの。よろしくお願いしますわ。サナサ様」

「お、王女!?」



みんな同じ反応するね。ちょっと面白い。



「……ふ、ふん!魔法試験で勝負よ!」



話飛んだね!?



「………わかりましたわ」

「ハレイ様…」

「大丈夫ですよ。ララ様。勝てるかわかりませんが、頑張ってみます」

「はい!」


一同「(いや、そこは勝つって言おうよ)」









訓練場


「両者、位置について」

「「………」」

「…………始めッ!」


ピーーーッ!


「「はぁ!!」」


ドォンッ!


「おぉ、やってるやってる」



観客席から下の闘技場を見る。


今は、男子生徒二人が戦っている最中だ。



ガキンッ


「勝負あり!勝者、マクガキンズ!」



うわっ、カミカミになりそうな名前!



「姫さま!」

「アメジスト」

「次ですよ!」

「え?マジで?」



次だった系ですか。


私の対戦相手は……うん。さっきのサナサ様になってるね。



「姫さま、呉々も気をつけてください」

「わかってるって」

「姫さまの言葉は信用ならないんです」



それ、ひどくない?



「じゃ、じゃあ、行ってくるから」

「行ってらっしゃいませ」



ふぅ、こっからは意識入れ替えていこう。






「両者、位置について」

「「………」」

「…………始めッ!」



教官殿。さっきと全く同じ言葉だなぁ。


音のブレも感じない。ある意味強者じゃあ…



「余所見していると………手が千切れますわよッ!」

「うわぁ!?」



なんて恐ろしいことを言うんだ!



「そんな子には…えい!」


ピシッ


「え?きゃあ!」

「どーよ。私、氷も得意なのよ」



あ、令嬢スイッチ、令嬢スイッチ。



「どうでしょう?わたくし、氷も得意ですのよ」

「………」



そうですよねぇ!微妙ですよねぇ!!



「…火よ!我が杖に集い、全てを焼き尽くす火球となれ!ファイアボールッ!」

「え、何それ!」



避けるけども!



「今の何!?」

「ファイアボールも知らなくて?」

「そうじゃなくて、呪文みたいなの!」



私使ったことない!



「教師から教わりましたのよ。この方が効率が良いとね」

「…ふーん。そ」



さ、それよりも、本番と行こうか。



トンッ


「?杖を地面に当てて、何を」


ゴゴゴッ


「地響き?」



これが、私のとっておきだ。



赤の薔薇レッド・ローズ!!」



名前そんままだから、あまりカッコ良く無いけどね!



私がそう叫ぶと、地面から、いばらが出てきた。



「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



サナサ様を持ち上げ、空中に浮かばせる。


どっちが根を上げるかな?



私の魔力?サナサ様の精神?



「くっ………こんなところで終わって溜まるもんですか!火よ!我が杖に集い、大いなる魔球とかせ!ファイアダブルボール!」

「名前そんまま!私と同じ!」



被ってるぞ!サナサ様!って、あ、ダメだ。これ負ける。

だって、火球でいばら燃えてるもん。


やっぱり私は脇役なのだ。はぁ。

サナサ様は自力で助かるよね。大丈夫だよね


さて、私は魔力切れだ。うん。




寝よう




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