第22話自分が脇役ということを思い出す(前)


(アメジストとアルディアは、専用の部屋で待機中)


1教室。


コンコンッ


「先生、お連れいたしました」

「入りなさい」


ガラッ


《うわぁぁ!!》



中にあったのは無機質な教室……ではなく、いかにもお金持ちのような、絢爛豪華な部屋だった。


おそらく、光魔法を使ったシャンデリア

可愛くカッコ良く、装飾されているロッカー

棚には美味しそうなお菓子がたくさん。


流石に椅子と机は木だったけども。というかそこに安心した私は一体…。


机は、中にお道具箱を入れる式ではなくて、蓋式だった。上手く説明できないけど、蓋があって、そこを開けると中空洞、的な?昭和とかにあったやつ。


現代じゃあまり見かけないよなぁ。



「雫マークのあなたたちは、一属性に優れているタイプの人です」



あ、話始まってた。


それにしても、一属性に優れた人、ね。私は植物魔法かな。



「あぁ、だから雫」

《?》



あ、声に出てた。



「そこの方、何故そう思ったのかしら?」

「え、っと、雫型だと、五角形採点表で調べた時に、一属性だけ優れているとわかるから、です」

「ふふっ、正解です」



うわー!良かったー!合ってたー!



「まぁ、雫型だけだと、四属性くらい優れている形になってしまうんだけどね」



あ、たしかに。下に三つくらいなっちゃうもんね。



「まぁ、そんなわけで、ここは一属性特化型クラス。通称、1教室です。そして、1教室担任の、リーニア・リントンです」



茶髪青目のリーニア・リントン先生。


優しそうな先生だ。



「それでは、今日は解散。生徒会から寮についての説明がありますが、召集がかかるまでは自由時間です」



パチンッと手を胸元で合わせ、かいさ〜ん、というリントン先生。


もう立っていいのか。



そう思って、席を立とうとした瞬間



ヒュンッ


ドスッ


「・・・ぇ?」



後ろの壁を見てみると



「はっ…?」



ナイフが刺さっていた。



「あなたは少し待ってね〜」



投げたのは、リントン先生だ。



ガタタッ!



「あっ!」



他の生徒が逃げ出す。


ちょっ、待てって、私も逃げたい!逃げ出したいッ!



「さて、ハレイシア・レイ・リースレットで合ってるかしら?」

「…それがどうかいたしましたでしょうか」



ねぇ、待ってこれ、急展開すぎるだろ。


何でクラスの説明した後にナイフが投げられるのよ。

おかしいって、これ。



「本物の王女様なのね!」

「???」

「私、王女様と一度お話ししてみたかったの!夢が叶ったわ!」



えぇぇ!?夢のためにナイフ投げたの!?


ある意味コイツ狂人じゃん!



「王宮って、どんなところ?王様ってどんな人?あ、言わないで、とても素敵な人なんでしょう?家族みんなを大切にして、暖かい家庭で、それでそれで」

「先生、一旦落ち着いて」

「あら、ごめんあそばせ」



私が止めると先生は、ふふっ、と笑う。


先生、どんだけ王家に夢見てんだろ。



「リントン先生。私はこれから、寮の説明を聞きに行きます。先程聞いた話では、全員が集まらないと始まらないそうです。なので、何が何と言おうと、私は行きます。では」



無表情でそう言ってやったぜ、へへっ。



ガッ バタンッ



後ろのドアは、立て付け悪いな。



「ふぅ………(逃げろ〜!!!)」



学園長に、ラズリテマ・スノースに、言いつけてやるわッ!









大講堂


「お、遅れて申し訳ありませんでしたっ」

「ハレイシア王女!お怪我は!?」

「ありませんです、はい」



あ、ラズリテマ(学園長)じゃん。



「うちの教師が飛んだご迷惑を!」

「い、良いんです。ナイフ投げられただけですし」

「良くありません!」



アメジストだ。アルもいる。


あぁ、良かった。



「あー、怖かった……」

「あの者は、担任から外してもらいしょう。学園長、良いですよね?」

「もちろんです」



私の知らぬ間に進んでいく話。


でも、アメジストが言ってることは有難い。

あんな教師、もう嫌だ。



「ひとまず。ここで寮の説明を受けてください」

「わかりました」

「アメジストさん、アルディアさん、王女様の側に」

「「了解です」」



あ、二人が側にいてくれるのね。やった。


あれ?ユーキは?



「ユーキなら外で見張りです」

「あ、そうだったの」



中ばっかりでも、ダメだものね。



「…さて、落ち着いたところで、寮の説明に入ります」



お、これはしっかり聞いておかなきゃ。



「寮は、月の寮、太陽の寮、星の寮の三つです。月の寮は王族と公爵家の寮。太陽の寮はその他の貴族。星の寮は平民の寮です。」



階級分けされてるのか。


そういえば、ここ。平民も結構いるのよね。

平民の子の方が、友達になれたりして…。



「男女も分かれておりますが、許可さえあれば日中だけ、出入りしても平気です」



ふむふむ、日中だけとな。


あ、兄様に会いに行けるや。やったー!



「他の寮に関しても同じです。質問は?」



私は無いなぁ


そんなことを思い、のほほんとしていると



「副会長!」

「何ですか?アミリア・ノーウェス」



スゲー!副会長、名前覚えてんの?



「そちらの銀髪の方が話を聞いていないように見えましたの!話が終われば下を向いたり、何かゴソゴソしてたり!気になって仕方がありませんわ!」



え?銀髪の子?どこどこ?私以外に銀髪って…あ。



「ハレイシア・レイ・リースレット」

「はいっ」

「手には何を持っている?」

「メモ帳と、ペンです。念のため、書いておこうかと思いまして」



まさか、書いてることが癪に触ったのか?



「そうか…アミリア・ノーウェス」

「は、はいっ」

「今までの話を言え」

「寮は三つ。月の寮、太陽の寮、星の寮があります。月の寮は王族と公爵家。太陽の寮はその他の貴族。星の寮が平民ですわ」



おぉ、完璧。



「その後は?」

「え?後…?」

「ふっ」



あ、副会長、鼻で笑った。



「ハレイシア・レイ・リースレット!メモを見ずに言ってみなさい!」

「は、はいぃ!えっと、許可さえあれば日中だけは、男子寮にも女子寮にも出入りできます!」

「正解だ。話を聞いていなかったのはアミリア・ノーウェス、あなたの方でしたね」



あ、また鼻で笑った。


そういえばさ、私、脇役だよね?

なーんでこんなに巻き込まれるのかな?


あれかな?よくあるやつかな?脇役のはずなのに、巻き込まれちゃう的な。



「(あ〜、やだなぁ〜)」



こう思いながらも、私を含め、新入生たちは皆、入寮した。

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