第18話騎士vs侍女
アメルの月。日本で言う、6月。
私こと、ハレイシアは今、近衛騎士団の舎に向かっていた。
何故って?
私の近衛兵を選ぶため。
正直言って、必要無いんだけどね。近衛兵。
アメジストとアルが強すぎるほど強いから。
「なっんでかな〜、なっんでかな〜」
「姫さま、変な歌を歌うの、やめてください。仮にも王族でしょう」
仮じゃないよ、ホントだよ〜
「声に出さなくてもダメです。」
「なんでわかるの!?」
「顔見ればわかります。」
そういうものなのか?
「そういうものなのです」
「テレパシー?」
「は?」
「ごめんなさい」
マジなトーンの声をお出しになった、アメジストさん。
「ほら、もう着きますよ」
目の前には少し大きめの鉄門が一つ。その前に二人、見張りの兵が立っている。
「結構立派ですね」
「殿下にお褒め頂くとは、光栄でございます」
「!」
前を見ると、金髪のイケメン(胡散臭そう)な人が立っていた。
「あなたは?」
「これは失礼。わたくしは、国王陛下直属の近衛兵団団長。ルドルフ・イラータと申します」
「…第七王女、ハレイシア・レイ・リースレットと申します。よろしくお願いしますわ。イラータ団長殿」
イラータ公爵家。王国の剣と呼ばれるほどの実力を持っていて、代々頭首が近衛兵団長を務めている。
つまりは、目の前にいるこいつが現イラータ公爵家頭首だ。
「(胡散臭そうだけどね、コイツ)」
絶対言っちゃいけないな。
「ささ、殿下、中へお入りくださいませ」
「ありがとうございます」
応接室(らしき部屋)
「あ、うま」
「姫さま?」
何よ、紅茶が美味しいとも言っちゃいけないの?
いや、たしかにね、私の言い方も悪かったかもしれないけど…
「スミマセンデシタ」
「よろしい」
アメジストさんや、二人きりだからって、ちょいといじめすぎじゃないですかね。
一応、あなたの主人でっせ、私。
ガチャッ
お、誰か来た
「お待たせいたしました。こちらが殿下の近衛兵となる」
「ユーキ・リテモ」
「…しっかり挨拶をなさい」
「……ユーキ・リテモ。リテモ男爵家の三男坊18歳。よろしくです。でーんか」
「「………」」
思わず、アメジストと顔を見合わせてしまった。
何だコイツ。やる気無さすぎだろ。陛下、もしかして嫌がらせ?
というかいきなり日本語に近い名前来たー!
「第七王女ハレイシア・レイ・リースレットです。これからよろしくお願いしますね、ユーキ」
頭の中は大混乱になってても、挨拶しっかり。これ大事。挨拶は大事よね。
「へっ」
「え?」
「チッ」
「……」
上から順にユーキ、私、アメジスト、団長。
アメジスト、舌打ちはやめよう?
「失礼ですが、団長」
「何かな?」
「この者は使えるのでしょうか」
「なっ!?」
あ〜、アメジスト〜。やめて〜
「んだとテメェ!お前より俺の方が強えし!何なら試してみっか!?」
「望むところです。あなたが姫さまを護れるかどうかを、私が確認してあげましょう」
「アメジスト〜……」
「…(ポンッ)」
私が呻いて?いると、団長殿が肩に手を置いてくれた。この人、良い人かも。
「では、訓練場へ行きましょう」
「「はい」」
「…はぁ」
訓練場
「両者、準備はいいですか?」
「私はいいです」
「俺も」
「では………始めッ!」
ピッ!
団長殿の笛の音とともに、模擬戦が始まる。
アメジストの使用武器は、ダガーナイフと魔法。
なんでも、ナイフ技術は侍女の嗜みだそうだ。
ユーキの使用武器は、騎士定番の洋剣。後、火属性魔法。
ユーキは火属性の精霊に愛されているらしく、魔法の中では火属性が得意なのだそうだ。
ま、元の魔力量が少ないせいで、あまり連発はできなそうだけど。
「殿下の侍女殿は、元の軸がしっかりしている。よく出来た侍女ですね」
「えぇ。出来過ぎていて、怖いくらいです」
ぼーっと観戦していると、団長殿から声をかけられる。
何かと思えばそんなことか。
「互角ですね」
「素晴らしい。ユーキについてくる者がいるとは」
「ユーキは強いのですか?」
「近衛兵新人の中で、トップです。」
うぇいうぇい。強かったのか、ユーキ君。
ま、それにしても……“ユーキについてきてる”、ね。
「アメジストについてきてる、の方では?」
「そうですかな?」
アメジストがナイフを投げる。ユーキがそれを剣で避ける。
アメジストの今回のナイフの所持数は多分、90。
ぱっと見、もう半分近く使っている。が
「(その分、魔法の力を上げてきている)」
魔力量は成長するにつれ増えていく。たまにユーキのようにあまり増えない者もいるが。
アメジストは、結構魔力量を持っている。
年齢で考えると、20歳ぐらい。
対してユーキは10歳くらいといったところだろうか。
「差が結構あるな」
「何か?」
「いえ」
この勝負、自信過剰じゃないけど、アメジストの勝ちかな…今のところ。
「ファイアボール!」
「おりゃあ!!!」
ザシュッ
「え?」
「ほう…」
アメジストのファイアボールを、剣で切った?
「嘘でしょ…」
魔法を物理攻撃で切るなんて、“これまでの常識”では考えれないことだ。
魔法は魔法で相殺。それが当たり前。
違う種の攻撃を、違う種の攻撃で相殺するなんて…
「………!、魔剣!?」
「これで、最後だぁ!!」
「くっ」
「
「ラスト…
ドォォォォンッ!!!!!!
「う…ぐっ……」
「殿下っ」
互いに残っている魔力を、全てぶつけたのだろう。地面がへこんでいる。
いや、やり過ぎだってば。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
「しょ、勝者、ユーキ・リテモ…」
「…あ…アメジスト!」
今まで空気だった審判官が、勝敗を告げる。
アメジストが倒れているということは、彼女の負けだろう。でも、そんなことはどうでもいい。
怪我の手当てをしなければ。
バタンッ
「ユーキ!?」
ユーキが倒れ、それに驚く団長殿。
「とにかく、急いで二人を救護室に」
「はい!
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