第13話城下町へ!(前)


「ん……んー」



もぞもぞっとベッドの中で動き、ぼんやりと起き上がる。


少しの間、ぼーっとして、部屋を見回す。


部屋の隅にある、麻でできたワンピースを見て一言。



「そうだ、今日は城下町に行くんだ」










「大丈夫ー?」

「大丈夫です。似合ってますよ」



姿見の前で、一回り。麻のワンピースがふわりと膨らむ。



「はい、必要なものはここに入ってますよ」

「わぁ、可愛いカバン」



アメジストが渡してきたのは、藁でできたカバン。

可愛い紫のリボンもつけてあるやつだ。



「何が入ってるの?」

「迷子になった時のための、地図とおやつ。一応王家の紋章(ペンダントバージョン)を入れています。」



アメジストちゃん、用意周到〜。



「あ、もちろん、私とアルもついていきますからね」

「本当?」

「ふっ、嘘なんてついてどうするんですか」



あ、鼻で笑われた。


そういえば、アメジストもアルディアのこと、アルって呼ぶようになったのね。



「いや、聞いてみただけで…」

「わかってますよ。さ、行きましょう」

「はーい」











城門前


「姫…じゃなくて、レイ、さん」

「“さん”もつけなくて良いのに」

「そ、そういうわけにはいきません」



髪を耳にかけながら、下を向き、目を泳がせるアサミ先生。



「……そちらの方は?」

「あ、紹介しますね。私の執事のアルです。アル」

「アルディア・ルリ・カラロルです。よろしくお願いいたします」

「カラロル…!?」



先生も知ってるのか…。



「あの、魔法で有名なカラロル家ですか!?」

「「「??」」」



良い意味で予想外の答えに、疑問符を浮かべる私、アメジスト、アルディアの三人。



「アル、有名なの?」

「さぁ?家の者は、僕が生まれた直後に全員実刑になってるから、知らないや」

「あ、そういえばそうでしたね!」



アサミ先生、明るい。にこにこと話している。


アルやアメジストも同じことを思っているのか、それ以上のことを考えているのか、若干呆れた顔になっている。



「アサミ様」

「はい、何でしょうか、アメジストさん」



そういやぁ、何で先生はアメジストに“さん”をつけるんだろうか。先生は18で、アメジストは今年で13のはずなのに。


もしかして、この間(破裂事件)怒られたのが原因かな?



「…ありえる」

「何がありえるのですか?」

「ううん、何でもない」



本当のことを言ったら、私も怒られる。


それは嫌だ。



「あ、もう行きましょうか!」

「あ、それもそうですね」



ここで立ち話をしていたら、始まらない。


今日の目的は、私の杖の原型を決めることだ。



「あ、レイさん」

「何ですか、わっ?」



私は何をかけられた??



「上着です。フード付きの。レイさんの髪の毛は目立ちますからね」

「そうなのですかね?」

「銀髪は帝国の王族しかいませんから」



へぇ、初めて知った



「では、出発!」

「「「おー!」」」









城下町・大通り


「活気がありますね」

「大通りですからね。一番人が多いところですよ」



目的の場所は、奥の路地裏の方らしい。



「はぁ…はぁ…はぁ…」

「何よ、アル。もうバテたの?」

「アメ、ジスト、早すぎ…」

「お前は遅すぎ」



正反対な二人だな。



「お二人の属性、何でしたっけ?」

「たしか、アメジストが光。アルディアが闇属性だったと思います」

「正反対な二人ですね」



先生もそう思いますか。



「でも、光あるから闇がある。闇があるから光がある。と言いますからね」

「良いこと言いますね、先生」

「こ、これでも先生ですから!」



えっへん、と胸を張る先生。



「…そうですね」



私はにっこりと笑ってそう答える。



「ちょ、何で今間があったんですか!?」

「何のことでしょう」

「待っ、レイさん!」



杖屋に着くまで、このやり取りは続いた。









グレイリー裏通り。ニシック杖屋


「ここが、杖屋」

「はい。手は信用できますよ」

「手、“は”?」

「うぐっ」



先生が痛いところを突かれたように、呻き声?をあげる。


アメジスト、そこは言わないであげておこうよ…まぁ、私も気になったけどさ。



「ここの主人、変人でして」

「何も隠さずに言ったね」



アル君が、即座にツッコミのようなものを入れる。



「アル、敬語」

「あ、すみません」

「良いんですよ。それくらい。私が二人くらいの時は、もっと子供っぽかったですし、じゅーぶん、あなた方はすごいですよ」



アサミ先生の言葉に、少し頬を赤らめる二人。



「さ、中に入りましょっか。気をつけてくださいね。中にいるのは曲者のジジ「誰が曲者頑固ジジイじゃ!」ぴゃあ!?」



木の扉が乱暴に開けられると、中から出てきたのは、背丈が小さい、顎髭の長いお爺さんだった。


曲者頑固ジジイ。一個単語が増えてる。



「ら、ラフル師匠…」



アサミ先生が、顔色を青くしながらお爺さんの方を見る。



「久しぶりにやってきたと思えば、何も知らぬ少年少女に何を吹き込んでいる!」

「だって事実じゃないですか!」

「なんだと!?」



そのまま口論が始まる。



「………あの」

「「何!?」」



恐る恐るといった感じで、アルが二人に声をかける。



「「あ…」」

「僕たちは、いつになったら中に入れるのでしょうか?」

「レイ様を、あまり外で待たせないでください」

「「はい…」」



アメジストとアルの、冷ややかな視線攻撃だ!


ツライ。これはツライぞ。



「す、すまんかったの。お嬢さん方。ほれ、アサミ、案内せい」

「ふへぇーい」



グレイリー裏通りに来て15分ほど。ようやく屋内に入れた。

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