第12話まとめてみよう(最初だけ)


見回りの兵士以外、誰もが寝静まる真夜中。


私は自室で、書き物をしていた。



「これまでのまとめ…っと」



前世の記憶を取り戻してから半年ほど。


そこから今までのことを一旦、紙に書き出してみようと思ったのだ。



「流石にアメジストも寝てるわよね」



アメジストに見られると、多分、質問責めになるから、わざわざこの時間帯を選んだのだ。



「まずは……」



・乙女ゲーム【七色の祈り】の内容。


城下町に暮らす少女、マリアはある日、自分がいなくなった本当の第一王女だということを知る。

お城に住むことになったマリアは、早く城に馴染めるように努力をする。


マリアが城に住み始めてから二週間後。

マリアのお披露目会が開かれる。そこでマリアは攻略キャラクターたちと出会うのだ。




「………」



なんか、箇条書きのような、そうでないような。



「…ま、いいか」



続き書こ。




マリアは学園に入学。攻略キャラクターたちと学園生活をキャッキャウフフ。


平和に過ごしていたら、魔族との戦争勃発。


魔族の親玉、魔王を封印するには七色の勇者と、祈りの言の葉を紡げる巫女が必要。



七色の勇者とは、攻略キャラたちのこと。


青の勇者、アリュート。

黄の勇者、サンディー。

赤の勇者、ルーカス。

紫の勇者、パラメド。

桃の勇者、リジーラ。

銀の勇者、ルキ。

黒の勇者、アルディア。


そして


祈りの言の葉を操りし巫女、マリア。



「そういえば、私はまだ、アリュート殿下しか見たことないな…後兄様とアル」



はぁ、このままゲームのストーリー通りに行けばいいけど。


というか、まぁ、もうストーリーに無いイレギュラー?なことが起きちゃってるから、時すでに遅しだけどねー!



「って、ダメだ。深夜テンションでおかしくなってる。落ち着け、私」



次、次は何を書こう。



「私のことを、書き出してみようか…」



ハレイシア・レイ・リースレット。


本来なら、スチルの隅に出ている、セリフも無いモブ以下のモブキャラ。


現在。


聖なる癒しを何故か発現。アリスティア王家に伝わる植物魔法の力が強く現れる。



「……これって、よくあるモブが凄い力持っちゃった系?」



うん。絶対そうだ。



「なんでだよー!」



何で私なの!他にもモブはいるでしょう!?


神様!いるならどうしてだよー!



「調子乗った私が、そういう風に言ったかもしれない…」



その可能性はありえる…。だとしても神様のせいにしてやる。



「はぁ………寝るか。続きは明日だ」



なんかもう、疲れた。











『どうしてこんな出来損ないを産んだ!』


『もっとこの国の利益になる子供を産め!』



あぁ、あぁ、どうして産まれてしまったの?


かわいい、かわいい、私の赤ちゃん。


お腹の外は辛いことばかりなのに。




何だろう、これは。男の人の声と、女の人の声?


というか、男の人酷くない?子供を利用価値でしか見てないなんて。




どうして、どうして、産まれちゃったの?




わからない。誰に言ってるの?




誰も愛してはくれないのに。ねぇ



ハレイシア




は?ハレイシア?私のこと?




だれもあいしてはくれなかった。




今度は何??




母様も、陛下も、兄様も。




何で?兄様は可愛がってくれるよ?




話してくれるのは、アメジストだけになった





私が忘れてるだけ?“わたし”は覚えてるの?


わからない、わからないわからない。




ワカラナイ





「はいっと、朝が来たー!」



大丈夫、ここは夢じゃない。



「急に大声を出して、どうされたのですか?」

「アメジスト」

「何でしょうか」

「………ううん!何でもないわ」



何を話そうとしたんだっけ、まぁ、いっか。



「?そうですか…さ、お着替えしますよ」

「自分でできるってば」

「はいはい」



信用してねぇな、これ……。



「マリア様たちが学園に入学なさってから、一ヶ月が経ちましたね」

「もうハルアの月か…」



ハルアの月とは。まぁ、五月ぐらいのことだ。


ハルアと呼ばれる、青と白のアサガオっぽい花が一斉に咲くことから、ハルアの月と呼ばれるようになったそうだ。



「そういえば、王太子殿下からの手紙、どうでしたか?」

「あー、うん、可哀想なことになってたわ」

「可哀想なこと!?」



胃に穴が開きそうとか、可哀想以外の何物でもないでしょ。



「胃に穴が開きそうだって、手紙で」

「あ、あら、大変ですね…」

「アメジスト」

「何でしょう」



そういやぁ、今日は何かあったっけな



「今日の予定は?」

「何もありません」



良かった〜



「(さて、これからどうしようか)」



マリア様とサファイアお姉様は学園へ行った。


私も2年後には入学するけど。



それまでの時間を、どのように使おうか。



「あ、来週はアサミ先生と城下町に行けるのよね!」

「はい、行けますよ」



にっこりと笑って答えるアメジスト。



「楽しみだなぁ…ふふっ」

「良かったですね」

「えぇ!」



城下町なんて、行ったことないもの。楽しみだわ。



「今日は授業も無いですからね。城下町について調べられたらどうですか?」

「あ、それ良い」

「では、資料を集めてきますね」

「うん!」



出来る侍女をもって、幸せだわ〜

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