第10話執事のアル君と魔法の先生
「「え?」」
執事の格好をした、アル君。
「えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」
「う、うるさいな!黙れよ!」
顔から耳まで真っ赤にしたアル君が、やけくそのように、そう言ってくる。
「こーら、アルディア。挨拶は?」
「挨拶?」
「……改めまして、本日よりハレイシア姫の執事兼護衛を勤めさせていただく、アルディアです」
「同じく、本日よりハレイシア姫の侍女兼護衛を勤めさせていただく、アメジストです」
「「よろしくお願いいたします」」
お、おう。何だ?いきなり、何なんだ?
アメジストまでなんかやってるし。
「兄様?これは…」
「今日からこの二人が君の部下で。ハレイは主人。いいね?」
「え?あ、はい」
あ…流された感が、半端ない。
「じゃ、授業でも習ったでしょ?」
「……汝らを我が護衛に任命する。我の命を守り、また、汝らの命も我に任せよ。汝らを仲間として認めよう」
たしか、た・し・か・これであってるはず。
私が今言ったのは、任命の言葉。
この間、授業で習ったことだ。
「「有難きお言葉。身に余る光栄」」
それを言い終えると、スッと立ち上がり、いつもの笑顔に戻る二人。
「これで、アルディアとアメジストは、君の正式な部下だ」
満足そうな顔をする兄様。
「そ、そうなんですか…」
理解はあまりできてないけれど、そういうことなのだろう。うん。
「それじゃ、僕は勉強があるから」
「わ、わかりました。ありがとうございました。兄様」
ガチャンッ
「「………」」
「行きましたね」
「あぁ」
「ねぇ、二人とも」
「「?」」
一体何なの?
「急にどうしたの?」
「…実はですね…」
アメジストが話してくれたのは
お披露目会の夜、アメジストとアルディアは兄様に私の部下になるように、私を連れて、この国を脱出するよう言われたらしい。
兄様は、この国の裏政治を偶然見てしまい、末王女の私だけでも逃さないものかと考えていたということらしい。
そのことを聞いて、アメジストとアルディアは一か八か、国壊しのことを話したらしい。
そしたら意気投合してしまい、兄様も国壊しに加担することにしたそうだ。
いや、ぶっちゃけ意味わかんないよ。
「わ、私はね、どうして二人が急に私の部下になったのかを聞きたいの」
「「?、それはわかりません」」
わからないのかい!
…まぁ、もう、いいか…。疲れた、はぁ。
それにしても、アル君の執事姿、カッコいいというよりは、可愛いな。
翌年、カトル歴166年。春。
マリア姫とサファイア姫が、王立アカデミーに入学された。
兄様は高学年生徒会員に抜擢され、15歳にして副会長の座に就いたそうだ。
私?私はね
「花よ咲け、小さな芽から、大きく伸びろ」
魔法の特訓。
パンッ
割と派手な音を立てて、花が咲く。
「うわぁ…何これ」
適当に、庭園に落ちてたタネを、拾ってきたんだけどなぁ…。
「兄様、助けてください」
マジで助けて。
そこに咲いていたのは、青い色をしたひまわりのような花。
「たしか…花よ戻れ、小さく小さく」
ポンッ
今度は可愛らしい音を立てて、花は小さくなった。これが元の大きさかは、わからないけど。
「ふぅ……休憩しよ」
ここ半年近くでわかったこと。
魔法は、精霊の加護が強いほど、と言われていたが、精霊に好かれていれば、最上級魔法が使える可能性がある、というものだった。
わかりやすくそう言えや、バーカ(泣)。
あ、そうそう、中級の魔法からは、杖無しには使えないらしい。
つまりは、まだ初級魔法しか使えないということ。
杖は12歳、王立アカデミーに入学する前に、親、または師から貰い受ける物らしい。
親は望み薄。多分、私が貰い受けるのは師匠、魔法の先生からだろう。
私の魔法の先生は、アサミ先生という。平民出身だが、魔法の才能はとてつもない。
城の神官たちからは『魔法の申し子』と呼ばれているらしい。
「(すごい人を教師に持ったもんだ)」
ロッキングチェアに座りながら、そんなことをぼんやりと考える。
コンコンッ
「どうぞー」
「失礼します」
この声はアメジストかな
「そろそろ授業の時間です」
「あ、もうそんな時間?」
「はい」
「ちょっと待って」
本と、羽ペン持ってれば良いよね。
「…よし、行きましょう」
「はい」
「一週間ぶりですね、ハレイシア姫」
「はい。一週間ぶりです。アサミ先生」
アサミ先生は綺麗な黒髪に、白の瞳を持っている美人さんだ。
私は美人というより、まぁ整っている方。
話が逸れた。
「今日はこの間教えた、水属性の初級魔法。ウォーターボールの試験を行います」
「はい」
「では、最初に魔力慣らしと行きますか」
「はい!」
アサミ先生の授業はとても面白い。
思わず時間を忘れてしまうほどだ。
「はい、まず最初に魔力の流れをかくにーん」
「…」
魔力の流れは、血液の循環と似たような物だと教えられた。
ザックリとだけど、血液の流れを想像する。
それを続けていると、体の内側がだんだん暖かくなってくる。その暖かさを手のひらに集中させると……。
「……できた」
魔力の塊、魔力石ができる。
先生の石は綺麗な透明。
私の石は
「霞んだ色……」
石の透明度は、魔力の多さを表しているらしい。
私は、まぁまぁといったところだろう。
「最初よりは良くなってきてますよ」
「本当ですか?」
「えぇ、魔力慣らしも済んだことですし、試験に移りましょう」
「はい」
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