第9話サポートキャラは暗殺者


昨日の夜。



「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」



マリア様が殺されかけた。






「ふぁんひゃうは?」

「はい。暗殺者が襲来したそうで、マリア様が怪我をしたそうです。」



私の髪を手入れしながら、昨晩起こった事件の話をするアメジスト。


メイドの耳は広いわね。



「それで…」

「何?」

「ゲーム的に何かありますか?」

「あぁ」



アルディアが隠しキャラなことは、既に話てある。


マリア様関連となると、ゲーム関連という認識になっているんだろう。間違いでは無いが。



「たしか……サポートキャラが元暗殺者だったような」

「サポートキャラ?」

「迷った時に、ヒントをくれるキャラのことよ。その暗殺者の名前は?」

「カリスと言います」



カリス、カリス、カリス、カリス。


うーん、そんな名前だっただけな?



「まぁ、今はマリア様が新しくお名前を与えられたので、カリスではないようですが」

「それ先に言って」



新しい情報を頂戴よ。



「新しい名はルル。黒い髪と瞳のルルです」

「ルルね」



たしかそんな名前だったような、気がする!



「立ち絵しかないキャラだったからなぁ」

「そうなのですか?」

「うん。スチルとかは全部覚えたんだけど」

「………」



ちょい、そこ、主人相手に引くな。



「好きなものだったんだから!」

「ソウデスネー」



くっ、アメジストめ…。



「さ、できましたよ。今日は朝食にお呼ばれされているのですから、急ぎますよ」

「はいはい、今行きますー」



準備が終わると、私の背中を押して、急かしてくるアメジスト。


そう。今日は陛下やマリア様に、朝食にお呼ばれしているのだ。



「(本当は、行きたくないなぁ)」



自室で食べてる方が落ち着くんだけど……。









コンッ コンッ


「失礼します。ハレイシアです」

「入りなさい」

「はい」


キィィッ



ん?この扉、油指した方がいいんじゃない?



「(って、現実逃避をするな私!)」

「ハレイシアちゃん、こっち座って」



げっ、隣とかやだよー!



「はい、ありがとうございます。マリアお姉様」

「良いんだよ」



はぁー、逃げ出したい。



「それでは、リースレットの恵みに感謝して、いただきます」

「「「いただきます」」」


「マリア、どれが食べたい?」

「じゃあ…ローストビーフを少し。ハレイシアちゃんは?」

「私も、同じのを」



いいか、私。ここではでしゃばるな。徹底的に従え。それが、今ここで私が生き残れる手段だ。



「(アメジスト〜、帰りたいよ〜、アルディア〜!)」



あぁ、今すぐあの愛しい部屋に戻りたい。


その思いは、天には届かなかった。



「あ、ハレイシアちゃん」

「何でしょうか。マリアお姉様」

「私の部下の子を紹介するね」



マリア様が手招きし、やって来たのは



メイド服を着た、黄色い髪と瞳の女の子。

多分、この子が“ルル”。



「この子の名前はルル。私の護衛兼侍女なの。」



この子が、サポートキャラ。



「…初めまして。第七王女のハレイシア・レイ・リースレットです。よろしくお願いしますね、ルルさん」

「さん付けは不要でございます。王女様」



教養はしっかりとされてるのかしら?言葉遣いに不自然さは感じない。


それとも、演技?それなら逆にすごいけども。



「(まぁ、注意するに越したことはないか)」

「ハレイシア」

「は、はい?」



陛下からの突然の呼びかけに、びっくりする私。いや、まじめに驚いた。



「昨日、聖なる癒しを発現させたようだね」

「え?あ、はい、そうです。うん」

「そうか…」



え?何なの、何があるの?怖いんですけど。



「聖なる癒し?………あぁ、あの怪我を治しちゃったすごいやつですか?」

「あぁ、そうだよ」

「あれ、すごかったよ!ハレイシアちゃん!あっという間に怪我を治しちゃって、ね?お父様、お母様」

「そうね、あれはすごかったわ」



あれ?王妃様とも仲は良好?険悪ムードじゃない…助かるけど、なぁ。



「(なんか裏が見えるような気がして、えぇ!?)」



説明。横目で右側見たら、ルルが私を睨んできてます。怖い。以上。



「(って、なんで睨まれなあかんの!?)」

「ハレイシア?ハレイシア!」

「はい、なんでございましょうか、陛下」



っぶねー、陛下の呼びかけ無視するところだった!



「実はだな」

「はい」

「お前の王位継承の繰り上げをした」

「はい、え?」



ヘイカ、イマナント?



「お前の王位継承を、繰り上げた」

「……えー、具体的には、どれくらい?」

「王位継承第3位だ」




「え?は?えぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」







「で?死んだ目をしながら帰って来たと」

「はい」



アメジストちゃん、そんな呆れた目をしないでくださいませ。



「それにしても、王位継承第3位ですか…」

「兄様、マリア様の次ね」

「これは予想外でした」

「何が」



アメジストの頭の中では、何が組み立てられてるのよ。



「聖女にさせられるかと思っていたので」

「聖女に?私が?うっそー」

「本気です。陛下も苦悩されたことでしょう。娘を教会に差し出すか否か」

「大方、母様が拒否したんでしょうね」



母様は、教会があまり好きではないらしい。


そんな場面、簡単に想像できる。



「まぁ、とにかく。今は情報を集めましょう」

「そうだね」

「どの辺りで公表しますか?」



どうしようか……あ、そうだ。



「六年後。マリア様の卒業式。ゲームのエンディングの時にやりましょう」

「エンディング?」

「えぇ。ノーマルエンディング。バッドエンディング、トゥルーエンディングがあるわ。それに、たしか、バッドエンディングは国の崩壊!」



それなら丁度良いはずだ。



「それは良いですね」

「マリア様がトゥルーエンディングに導こうとも、私たちにはこの情報(王妃の浮気)がある!」

「負ける気がしませんね」

「うん!」


コンコンッ



あれ?この時間に誰だろう。授業の先生はまだ来ないだろうし…え?本当に誰?



「どうぞ…」

「入るよ」



兄様だ!



「はい!」


ガチャッ


「「え?」」

「……」



扉を開け、一番最初に目に入ったのは


執事の格好をしたアルディアの姿だった。






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