第8話力とお話
「三人とも、将来はきっと、この国に大いに貢献するだろうね」
「「「………」」」
「どうしたの?」
「な、何でもありませんわ」
ごめんなさい、兄様。
私たち、国壊そうとしてるんです。
「話を戻そうか」
「はい」
「ハレイは、僕たち兄妹が魔法を使えるのを知っているかい?」
「魔法…」
そうだ、記憶を思い出す前の「ハレイシア」の時から聞いてたから、当たり前だと思ってたけど、この世界には【魔法】があるんだ!
「ま、魔法って、誰にでも使えるものじゃないんですか?」
「平民でも使える者はいるけどね、精霊に愛されていないとできないんだ」
「精霊に?」
どういう意味だ?
「精霊の加護、ですよね?王太子殿下」
「アメジストの言う通りだ」
「精霊の加護?」
何じゃそりゃ
「魔法適性はね、精霊の加護の強さによる」
「…というと?」
「精霊の加護が強ければ強いほど、魔法適性が高いんだ」
……加護が強ければ、魔法がいっぱい使えるのか?
「まぁ、魔法を使うには、自分の魔力量も必要だけどね」
「そうなのですか…」
魔法って、ややこしいなぁ
もっと、「火よ!」って叫べば現れそうなのに。
「………火よ」
「ハレイ?何を「ボワッ」え?」
「「え?」」
「は?」
でーーーたーーー!!!
あっはっはっはっはっ!神様や!これが俗にいう「チート」ってやつですかぁ!?
畜生!何でチートな力持ってんだよ!
この世界の魔法はっ!魔方陣描いて、呪文詠唱して、やっとできるんだぞ!?
先人たちの努力を、無に帰しやがってぇぇ!
「すごいね、ハレイもほぼ無詠唱でできるんだ」
「…“も”?」
「僕もだよ。ほら、水よ」
ポワッ
「うわぁ…」
兄妹揃ってまさかのチートですかー?
神様ー、美形で優しくて天才って、最早無敵じゃないですかねー、兄様って。
まぁ、いいや、それはとりあえず置いておこう。
「他にも、単語だけでできる人っているんですか?」
「いるよ。現聖女様とか、母様とかね」
「母様も?」
【ティアドール・レイ・アリスティア】。私と兄様の母であり、この間読んでいた本に出てきた、アリス帝国の姫だ。
本に書いてあった通り、母様は不思議な力を持っている。
「失礼ですが、ハレイシア様たちのお母様はどんな力をお持ちで?」
「力?」
「本に出てくるのです。アリス帝国の姫は、不思議な力を持っておりました。その力のおかげで、リースレット王国派豊かになった、と」
「そうなのか…」
「よく知ってるね。その通り、母は不思議な力を持っているよ」
どんな力なのだろうか。
「植物を操る力だ」
「植物を?」
「あぁ」
それって、どういう能力なんだろう。
「母様だけじゃない。アリスティア一族は、植物系統の魔法が得意とされている。母様は、一族の中でも一番力が強かったんだ」
そんなんあるんだ。
「僕も植物を操れるよ」
「兄様も?」
「ほら、見ててね」
そう言うと、兄様は窓辺にあった花を持ってくる。
「花よ伸びろ、天まで届け、咲け、魔花」
花に手をかざし、呪文のようなものを唱える兄様。
少しすると
パリンッ
花が、鉢植えを“根”で貫いた。
「「「え?」」」
「面白いでしょ?戻し方はね、こうだよ」
そう言って、また花に手をかざす兄様。
「花よ戻れ、小さき命、貝殻」
「どうして貝殻なんですか?」
「この魔法に必要なのはね、想像力」
想像力?
「僕は貝殻っていうと小さいものをイメージしやすいから」
「あぁ、だから、大きくなるときは魔花」
「魔花って大きいですもんね」
何でアメジストとアルディアは納得してんの?
「とりあえず想像してみなさい」
「んー…花よ伸びろ、天まで届け…大きく?」
グンッ
「うわっ」
「さっきのよりも…大きい?」
「ふむ………どうやら、ハレイは母様の力を強く引き継いだようだね」
前々から思ってたけど、兄様って全然十四歳に思えないよね…。聡明っていうか、大人っぽいっていうか……。
「そうなの?」
「僕は、植物の成長と退化しかできないけど。ハレイはもっと、他のことも出来るかもね」
私の頭を撫でながら、そう言ってくる兄様。
「(気持ちいいなぁ…)」
私は背景キャラだ。
そんなキャラが、攻略キャラである兄様ならまだしも、こんな力、持っていいのだろうか。
「(あー、でもあるよなぁ、モブに転生したら、チート持ってたとか、うん。私もその類なのかな?癒しの力持ってるし)」
転生した時に、説明してくれないと…。いや、説明してくれてるのか?私が覚えてないだけで。
「(まぁ、いいや)兄様」
「何だい?」
「そろそろ、寝ても良いでしょうか?」
「あ」
「「あ」」
本当に疲れてきた。難しい話ばかりで。
「寝なさい。アルディアとアメジストは僕と来てくれ」
「「わかりました」」
「おやすみ、僕の可愛い妹」
あ、花戻すの忘れてた忘れてた……ま、いいか………。
ーーーー
ーーー
ーー
「「ハレイシア(様)の側近?」」
「あぁ、そうだよ」
僕の名前は、ルキ・メルディア・リースレット。
ここ、リースレット王国の第一王子だ。
僕には、一人の妹がいる。まぁ、異母妹もいるけれど。
妹の名前はハレイシア。十歳の女の子だ。
僕の可愛い妹は、最近、生き生きとしている。
理由は分からなかったけれど、兄としてはとても嬉しい。以前のような、諦めた目をさせることはないと、思えたから。
「なぜ、私たちを側近に?」
「ハレイシアと仲が良いからですか?」
仲が良いからこその贔屓か、とアルディアが聞いてくる。
まぁ、普通はそう考えちゃうよね。
「違うよ。たしかに仲が良いのも取ったさ。でも、君たちは実力がある。アルディアは魔法。アメジストは戦闘メイドだしね」
「「!」」
「そこを見込んで、頼みたい」
「妹を連れて、国から出てくれないか」
ーー
ーーー
ーーーー
乙女ゲーム『七色の祈り』終了時まで、後、六年。
「それまでに…どうやって国壊すかなぁ」
って、いかんいかん、あの二人に毒されている。
でも
「本当に、どうしたもんかなぁ」
ゲームの設定に無いことが起きてるし、頭の中は混乱している。
「ま、今はもう一度寝るかな」
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