第7話兄とアルと


「アメジスト〜、助けて〜!」



私は半泣きになりながら、駆け寄ってきたアメジストに助けを求める。



「姫さま、大丈夫ですからね、落ち着いて」



パニックになっている私を、優しく落ち着かせるアメジスト。



「ハレイシア?」

「……に、さま?」



兄様だ。目の前に、兄様がいる。



ルキ・メルディア・リースレット。


リースレット王国の第一王子。リースレット王国唯一の王子であり、国王から、それはそれは大切に育てられている。


誰にでも優しく、文武両道。剣術に関しては、天才といっても過言では無いと言われている。



「にい、さま…」

「ハレイシア……ハレイシアが治したのかい?」

「は、い…」



怖い。怖い、アメジスト、そばにいて。



「……大丈夫ですよ、姫さま」

「ハレイシア、大丈夫。立てるかい?」

「……」



首を横に振る。力が抜けて立てない。



「そうか……では、少し失礼するよ」

「え、あ、わっ」



これって、あれじゃない?お姫様抱っこじゃない?


兄様、有り難いのですが、下ろしていただけませんかね、視線が痛いんです…あ、ダメですか。はい…。



「アメジスト、ハレイシアの部屋に案内してくれ」

「わかりました」









「ここが………ハレイシアの部屋?」

「はい」

「本当に?」

「はい、中は結構綺麗です」



本当だよ?意外と暖かいし。



「アメジスト」

「何でしょうか」

「簡単に荷物をまとめて来れるかい?」

「?、出来ますが…」



兄様?何を考えていらっしゃるのですかい?



「じゃあ頼んだ。僕はハレイシアを別の部屋に運ぶから」

「「別の部屋!?」」

「こんな冷たい場所では、もっと気分が悪くなってしまうだろう?」



そういうもんなんですかねぇ…??



「とりあえず、僕の部屋へ行こうか」

「へ!?」

「さっきの力についての説明もあるから」

「…わかりました」



というか、そろそろ下ろしてくれませんかね?…あ、ダメ。わかりました。









ルキの部屋。


「蜂蜜ミルクだよ」

「ありがとうございます」

「敬語じゃなくても」

「いいえ、そういうわけには参りません」



兄様は王太子で、私はただの第七王女だからね。



「あ、ルキ様とお呼びした方が良いですよね」

「いや、兄様って呼んでくれ」

「?、わかりました…」



本当はダメだけども。



「さて、ハレイの力について説明しようか」

「はい」



あれは……傷を治したあの力は、一体何なのだろうか。



「ハレイが使ったあの力は、『聖なる癒し』と呼ばれる力だよ」

「聖なる癒し?」

「そう。癒しの精霊たちが、気に入った人物に力を貸してくれるんだ。そうすることで、その人は他の人の怪我や病を癒すことができる。」



なんか、凄い力を授かったみたいだ。



「ま、陛下は君じゃなくて、マリア姫が聖なる癒しを手に入れると、思っていたみたいだけどね」

「マリアお姉様が?」

「あの子はほとんどの精霊に愛されている。正に精霊の愛子だ」



精霊の愛子……ゲームのスキルにあったやつだ!



「ハレイ。しばらくは僕か、アメジストのそばを離れないでね」

「どうしてですか?」

「気のせいかもしれないけど、君が傷を癒した時、マリア姫がその光景を睨んでいたようにみえたから」



うーん、たしか、『聖なる癒し』も主人公特有スキルであったな。


それが奪われたと思ったから、睨みつけられたのか?



「ま、とりあえずは君の部屋の移動かな」

「え」

「どうした?嫌なのかい?」



あそこが私の部屋じゃなくなる…アルディアと会えなくなる!



「い、嫌です!友達と会えなくなってしまいます!」

「その友達というのは」

「「!」」

「此奴のことですかな?」



誰!?



「神官殿?」


ドサッ


「アル!」

「ハレイ?その子と友達なのか?」

「は、ハレイ」



アルに、何をしたッ!



「姫君、そんな恐ろしい顔で見ないでくださいな。姫君は此奴の正体を知らないだけ。此奴は」

「国家反逆罪をした家系の末子、でしょ?」

「なっ」



知ってる。だって調べたもの。



「わかったなら、アルを置いて、出て行って」

「くっ…いつか後悔しますぞ!」


バタンッ


「……………ふぅ」



嵐は去った…。



「アル!」

「ハレイ!」

「大丈夫だった?」

「元気だ。怪我も何もしてない」



なら安心だ。



「おや、久しぶりだね。アルディア」

「王太子殿下……!?」

「兄様のこと、知ってるの?」

「兄様!?」



兄様のことは知ってても、それは知らなかったのね。


まぁ、そうよね。私と兄様、髪色と瞳の色は同じだけど、それ以外全く似てないもの。



「ハレイシアと仲良くしてくれて、ありがとう」

「い、いえいえいえ!」



アル、首と手が凄いことになってるよ。



「ハレイシア、アルディアにも話して良いかな?」

「はい、もちろんです」






「聖なる癒し、ですか?」

「あぁ」


コンコンッ


「誰だ?」

「アメジストです」

「入れ」


ガチャンッ


「あれ、アルディア様?何故ここに…」

「連れてこられた、以上。」

「仲がいいんだね。三人は」



なんか、ここに来てアルディアのキャラ崩壊が、更に進んだような気がする…。



「そうですかね?」

「そうだよ。三人とも、将来はきっと、この国に大いに貢献するだろうね」

「「「………」」」

「どうしたの?」

「な、何でもありませんわ」



ごめんなさい、兄様。




私たち、国壊そうとしてるんです。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る