第5話ここには出なかった気が…


アルディアと出会ってから一週間が経った。


あの後、アメジストも紹介して、せっかくだから三人でお茶でも飲もう!と提案した。



その時に、呆れたような笑顔で見られたのはきっと私の見間違いだ。



さて、何で私がこんな回想をしているのか。


理由は簡単。現実逃避をしたいから。


何故現実逃避をしたいのかって?




王妃様のお茶会に、他の王女共々呼ばれたからだよっ!




何でだろ〜ね、冷やかしかな?冷やかしなのかな?


んっん〜、イライラゲージが着々と溜まってきたぞ〜?



「ハレイシア」

「はい、何でしょうか、王妃様」



にこにこ笑顔で固まってたから、不気味に思われたかな?



「あなたも何かお食べなさい」

「はい、ありがとうございます」



手前にあるクッキーを一枚貰い、ちまちまと食べ始める。


私がクッキー類を食べる時の癖だ。


両手で持ち、ゆっくり食べる。



「そんな質素なものでなくても…ほら、カップケーキもあるわよ?」

「ありがとうございます。いただきます」



あぁ、美味しい…幸せ……って、太らす気か!


ダメだ、このまま居たら、絶対に王女としてあるまじき姿になってしまう(=太る)。



「王妃様」

「何かしら?」

「これとこれと…これをお土産にいただけませんでしょうか?」



よって、これにて退散!



「あら、もう帰るの?」

「そろそろ勉強の時間ですので」

「偉いわねぇ、うちの子たちとは大違い」



そりゃあんたの教育のせいだよ。



「では、失礼します」

「楽しかったわ。また呼んでも良いかしら?」

「はい、もちろんです」



もう二度と呼ぶなよ、いいか、二度とだぞ?フリじゃないからな?


あ、お土産はバスケットに詰めてもらいました。


貰ったのはカップケーキ3個。ドーナツ3個。クッキーが12枚。


もちろん、アルディアとアメジストと三人で食べる分。



「(二人とも、喜んでくれるかな?)」



その前に、甘いもの大丈夫なのか?



「まぁ、そん時は、どっかにおすそ分けしよう」







隠し部屋。


「「わぁぁ〜!!」」

「えっ」

「「あ、コホンッ」」



え、何、二人とも…双子みたいにシンクロしてたよ?



「どうしたの?ハレイ」

「あ、いや、ふた「姫さま?」…うっ」



い、いやぁ、お二人とも、甘いもの大好きなんですね〜!



「って、何で言わせてくれないのよ!双子みたいだって!」

「「うっ!」」



さては…恥ずかしいのか?



「さ、さぁ、それよりもお茶の準備をしまふね」



あ、噛んだ。アメジストが噛んだ。



「っ〜〜〜!!」



顔真っ赤にしてる、可愛い



「…ん?」

「……」



アルディア君や、何故君は、そんなに瞳をキラキラとさせているんだい?


はっ…もしや、恋!?



「むふふ、応援しようではないか」

「え、何が?」

「ううん、何でもない。食べよ?」

「あぁ!」



とりあえず結果。


二人は甘いもの大好きでした。


この間のお茶の時は、お菓子がなかったからわからなかったよのね。



「姫さま」

「なぁに?アメジスト」

「今夜のドレスについてなんですが」

「ブフッ」



あ、ごめん、アル君、かかっちゃった。



「うわっ!?」

「だ、大丈夫ですか…」

「こ、今夜って、何あったっけ?」

「忘れたんですか?マリア姫様のお披露目パーティーですよ」



うん。それは知ってる。知ってるんだ、アメジスト。


あのね、アメジストには言ってないけど、それ、イベントなんだよ。


留学中の他国の王子や、貴族の子息たちがマリア様と出会うイベント。



「(私…それには出ていなかった気が…)」



ハレイシアが出てたの、他国の王子とダンスを踊ってるスチル、それの一枚だけだよ?


その野次馬にいるだけだよ?今夜のイベントには出ていなかったよ?多分。



「ふーん、お披露目会か」



興味無さげに言いながら、アル君はクッキーを食べる。



「何でそれに私も出なきゃならないの?」

「何でって…あなた、一応第七王女でしょう?」

「一応がつくんだね」



私そんなに王女らしくないかな?



「なぁ、それよりもさ」

「何ですか?アル様」

「お前ら、国壊すんだってな」

「アメジスト?」



アメジスト?何で目線が泳いでるのかな?



「話したのは別にいいんだよ?何で私に言わないのかな?」

「忘れてたんですよ」



むくれないでよ、アメちゃん。



「ハレイ」

「何?」

「僕もその仲間に入れてよ」

「へ?」



良いの?



「正直、この国にはもう居たくないし。逃げ出せないから壊すしかないんだよ」

「あそこから出ればいいのでは?」

「これが邪魔してね」

「何?これ」

「魔術具」



アル君が見せてきたのは、両腕にはめてある金の腕輪。これが魔術具なのか?


私が頭に「?」を浮かべていると、アメジストがさらりと答えた。


魔術具って、何?



「この城、城内の部屋には全部結界が張ってあるんだ。僕がこの隠し部屋や、通路を覆っている結界を超えると」

「王や神官に連絡が行く」

「そゆこと」



そんな仕組みになってんだ。へぇ。



「姫さまにもつけられてますよ」

「え!?」

「姫さまの服、髪飾りなんかには、全部」



え、キモッ。何それキモッ。王様キモッ。



「はい、引かない。陛下に失礼ですよ」

「まぁ、うん」

「で?許可してくれんの?」



アル君、最初に会った時よりフレンドリーになったねぇ。


喜ばしいことだけど、これが俗に言うキャラ崩壊?



「それよりも、仲間に入れてくれる?」

「あ、そうだね、良いよ」

「軽いな…」



仲間は大歓迎だ。アル君なら、裏切る心配は一応少ないからね。



「とにかく」

「はいっ」

「姫さまはそろそろお支度の時間です」

「えっ、もう?」



私の部屋と同じ、格子がついてる窓から見えるのは、赤く染まり始めた空。



「そっか…じゃあ、アル君、またね」

「あぁ、またな」







ガガガガガッ


ガタンッ



「………あ、アル君って呼ばれたッ!」



ハレイシアが帰った後に、気がついたアルディアだった。

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