第2話私は悪くない…多分。


「ーー!みて、新しいゲーム買ってもらったの!乙女ゲームでね、題名は」




「七色の祈り」




「……ま!ひ、さま!ひめ……!ひめさま!姫さま!」

「うわっ!?」



な、何!?



「あぁ、よかった。お目覚めになられたのですね」



なんか起きたら目の前にアメジストがいた。



「あー……アメジスト、だよね?」

「?、そうですよ?頭バカになりましたか?」

「仮にも王女に向かってそれはひどい」



そう、仮にもだよ、私、おう、じょ…?



「ーー!みて、新しいゲーム買ってもらったの!乙女ゲームでね、題名は「七色の祈り」!」



「うっ!」

「姫さま!」

「あ…な、何でもない」

「本当ですか?」



「ホントホント、大丈夫」と言って、とりあえずアメジストを退室させる。


こんなこと、言えないもの。



「ここが、乙女ゲームの世界だなんて」



しかももうスタートしちゃってるやつだし。





「七色の祈り」とは、私がかつて住んでいた世界にあった「乙女ゲーム」と呼ばれるものだ。


「乙女ゲーム」。それは、主人公がイケメンたちと“キャッキャウフフ”をするものだ。


非モテだった私は、悔し泣きしながらゲーム画面に引っ付いてたっけ。



「懐かしいなぁ」



もうあの頃には戻れないのか、と思いつつ、テンプレだなぁ、とも考える。



「ハレイシア、ハレイシア……どこにでてたキャラクターだっけ?」



作中ではハレイシアなんて名前、出てこなかったような気が…あ。



「あぁ、舞踏会のシーンの野次馬に出てきた子だ!」



って、私の出番たったのワンシーンかよ!

セリフもクソも無いじゃん!



「悔しい…」

「何がですか?」

「ぎゃあ!?」



あああアメジスト!?いつのまに!



「なんか、一人でこそこそ怪しかったので、つい来ちゃいました」

「“つい”で主人の部屋に、勝手に入るんじゃない!」

「あはは。それよりも、乙女ゲームって何ですか」



ぎゃぁぁぁぁぁ!!!

バッチリ聞かれてるぅぅぅぅ!!!



「っ…………」

「何ですか?」



クッソ、ここで脅迫の笑みを使ってくるなんて…卑怯だ、卑怯だぞ!アメジスト!



「ふふふっ」

「っう…」

「………」

「…オトメゲームトイウノハデスネ…」



結局話す羽目になった。







「なるほど、姫さまはその、転生者という方で、ここは乙女ゲームと言われる世界なんですね?」

「まぁ、多分…」

「姫さまはそれをやったことがあると」

「はい」



まぁ、そうなるね。



「そのゲームの中で、姫さまがどうなるかはご存知ですか?」

「あー、死ぬ」

「は?」

「基本的に、巻き込まれて死ぬ」

「何に?」



何って、王族といえばあれでしょ



「王位継承権争いに」

「…確実に、このまま行けば、姫さまは死にますか?」

「うん、死ぬね。確実に」

「そうですか……」



うーん?アメジストさーん?目が暗くなってるよー?



「姫さま」

「は、はい」

「国、滅ぼしましょう」

「・・・は?」



アメジストさーん?今なんて言ったー?



「だーかーら、この国を、リースレット王国を、滅ぼすのです。私たち、二人で!」

「え、えぇぇぇ!?」

「ふ、ふふっ、そうすれば、姫さまは死なない!ふふふふっ」



…何がどうなってるかはわからないが、これだけは言わせてほしい。




私は悪くない…多分。


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