どんでん返し、いつ仕掛けるか?(5)

 物語の終盤となる第三幕は、クライマックスとエンディングとで成り立っています。クライマックスとは、主人公が最大の危機に対峙して、それに打ち勝つパート。クライマックスの後にくるのがエンディングで、主人公の努力や犠牲が報われた様子を描いて物語を締めくくるパートです。


 さて、クライマックスでは主人公は最大の試練に打ち勝つのですが、「なぜ主人公は勝てるのか」という問いに答えなければなりません。

 第二幕までの積み重ねがしっかりしていれば、単に「がんばったから」でも十分説得力が出るのですが、ここでどんでん返しを仕掛けるという手もあります。つまり主人公の逆転勝利の理由付けとして使うわけです。敵役の盲点を突くとか、何気ない主人公の能力や世界設定の一つが逆転につながるというパターンがよくありますよね。


 一方、エンディングのパートでは物語は実質的に終わっていて、物語世界の中で大きな動きは起こりません。

 したがってエンディングのときに仕掛けるどんでん返しは、物語を振り返ってその意味を変えてしまったり、そこに別の意味を付け加えたりするものになります。有名な例としては映画『猿の惑星』が挙げられるでしょう。映画の最終盤に現れる光景のせいで、観客は今まで見てきた作品世界への認識を変えなければならなくなります。

 難しいですが、うまく決まれば非常に大きなインパクトを与えることができる方法です。


 ここでやってはいけないのは、これまで語ってきたことを全部無意味にしてしまうこと。その典型例が「すべては夢でした」という夢オチ。また、無意味とまではいかなくても、今まで重大な事として描いていたのが、実は大したことではなかったことになってしまうようなオチも不満を生みやすいようです。

 どんでん返しというのは、今まで描いてきたことは全部本当だけど、そこに含まれる意味は最初に思っていたのと違ってた、となるから凄いんですよね。それと比べて「すべては夢でした」と持っていくのはぜんぜん難しくないわけで、その安易さが嫌われるという面もあるでしょう。


 ただし、夢(あるいは幻覚、仮想現実など)を使うのがすべてダメというわけではなく、小ネタ・中ネタくらいの扱いにして、中盤までに回収してしまえばだいたい問題ないかと思います。


 以上、第一幕から第三幕までの要所について語りましたが、最後にその他のパターンにも触れておこうと思います。

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