どんでん返し、いつ仕掛けるか?(4)

 三幕構成の物語で、第二幕は前半と後半に分かれます。大雑把に言うと、前半は主人公がおおむね順調に目的達成に向かって進んでいく、明るい雰囲気のパート。それに対して後半は、主人公が苦境に陥る、重たい雰囲気のパートです。


 そして、前半と後半の切り替わりのタイミングをミッドポイントと言い、話の「空気が変わる」ポイントになります。映画だとだいたい上映時間の真ん中あたりに来ます。大きめのネタでどんでん返しを仕掛けるなら、このミッドポイントに合わせるのが一番やりやすいと思います。


 物語の最後まで引っ張るのと比べれば失敗のリスクは下がりますし、逆に、第一幕でどんでん返しを仕掛けるの比べるとタメが大きいので、作品の中核になるくらいのインパクトを持たせることもできます。

 また、ドラマが明から暗へと転換するのに合わせて重大な事実を明かせば、それだけ与える印象は強くなります。どんでん返しを皮切りにして第二幕後半の主人公の苦闘が始まるという構成にすると、単に予想外の展開で驚かせるというだけでなく、ドラマ全体の構成の一部としてもうまく機能します。

 このタイミングを利用した事例としては、映画『君の名は。』が挙げられるでしょう。


 第二幕で重要なタイミングは、ミッドポイントの他にもう一つあります。第二幕の終わりとなる第二ターニングポイントの直前です。ここはどんでん返しというより、今まで意図的に伏せておいた“謎”の答えを出すタイミングですね。


 ドラマの構成が上手くいっていれば、第三幕は最高に盛り上がるはずなので、余計な捻りはなくても構いません。むしろ、第三幕で余計な新情報を付け加えるのは、結末に向かう気持ちよい流れにかえって水を差すことになりかねません。したがって特別な狙いがないなら、明かしておかなければいけない情報は第二幕ですべて提示してしまった方がよいように思います。

 そして、ここで明かされる事実は意表を突くようなものである必要もありません。たとえ予想の範囲内だったとしても、それまで伏せておかれた謎の答えが明かされることで、物語がいよいよ佳境に入ってきたと印象付けることができるのです。


 以前に書いた『ハリウッド三幕構成で分析するTVアニメ』という文章で、「裏主人公」というタイプのキャラクターについて述べたのですが、この裏主人公というのも実は“第二幕の終わりの情報開示”という機能を果たす仕組みの一つと言えます。

 『ハリウッド三幕構成で分析するTVアニメ』は、カクヨムに置いてあるので、よろしければ読んでみてください。三幕構成について個人的な見解が書いてあります。


 ただ、第三幕でどんでん返しを仕掛けることが絶対にいけないというわけではありません。というわけで、次は第三幕でのどんでん返しについて書きます。

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