6.ILY
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
俺達は人の少ない堤防に腰を掛け、静かに二人で花火を眺めていた。色鮮やかな花火達が、浮かんでは消えてを繰り返す。向こうからは歓声と「たぁまや~」の声が聴こえてきて、それがまた風流だ。
「今日はありがとう。まさか、透月さんが誘ってくれるとは思わなかった。楽しいね」
「こちらこそありがとうございます。てっきり、断られると思っていたので……」
「それはない!!」
「そうですか……。勇気を出した甲斐がありました、ふふっ」
「なんで、俺を誘ってくれたの?」
「なぜって……。なぜでしょうねぇ……」
透月さんの白い肌の上を、花火の色が躍る。
「じゃあ、なんで俺は断らなかったと思う?」
「……なぜでしょうねぇ?」
そう言った透月さんの口元は、少し笑っていた。
「俺が、一緒にいたいと思ったから。元々、俺も誘うつもりで……。っそれに、つ、伝えたいこともあって――」
覚悟を決めて、想いを伝える。
「好きだ、あなたのことが」
「異動の前から、ずっと……本気で好きゅ」
……なんで、ここで噛むかなぁ?!!
耳が熱い。最終的にもごもごしてしまい、声も小さくなってしまった。
けど、言えた。聞いてもらえた。
あとは、返事を待つのみ――!
「私が言えることは、三つです。一つ、駅で困っていたおばあさんの荷物を全部運んでいた先輩を見かけました」
そんなことあったっけっか?……あぁ、あった。でも確かそれって、二年くらい前のことだったはず――。
「二つ、教育係に先輩を指名したのは私です。私がお願いして、先輩を教育係にしてもらいました。運命でも、偶然でも、ありません」
それは初耳だ。何しろ、教育係は部長が任命する。指名などできるはずがない。
……本人が思いつかない限り。
つまり――。
透月さんは自分の唇にあてた指を、俺の唇にそっとあてた。
「三つ目……もう、おわかりですよね?」
あたたかいのが、心の底からじんわりと
ぎゅーっと透月さんを抱きしめて、照れ合って、笑い合う。
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