第2話 破滅

思考停止。


「最後の地球人」?


俺が?


どういうことだ?


?で埋め尽くされ続ける脳内に、少女の声が割って入る。


「そういえば、あなたは知らないんでしたよね」


何をだろう。


「あなたの知る地球が、ついさっき滅んだことを」








「滅んだ!?!?!?!?」








ええ、と少女は苦笑い。


「あなたが寝ている間に、地球が滅んだんですよ」





!?





嘘だろおい。


「じゃあなんで俺は生きてんだよ、おかしいだろう?」





少女ば首を傾げる。


「私が助けたから、以外に無いとは思わないんですか?」





そうか。





俺は、この少女に、命を救ってもらえたのか?だとしたら、この少女は一体何者?





少し強めの口調で、少女は畳み掛ける。


「私の、手助けをしてほしいんです」


「世界救済の、手助けを」





「って言ったって、地球は滅びたんだろ?」


疑問。


壊れたものをもとに戻すような口振りの少女。





「ええ。『あなたの知っている地球』はね」





俺の、知っている地球?





知らない地球が、ある?





となると、つまりは、





「パラレルワールドです」


「パラレルワールドだな」





言ったものの意味がわからない。恥ずかしながら。


「俺にも分かりやすいように詳しく教えてくれ」





少女は決意の表情で、


「分かりました。いまから言うことは、全部事実です。受け入れて、私の手助けをしてくれるなら、お話しましょう」


どういうことなのか、分からないことだらけだ。


どうせなら、全てを知ろう。





「分かった」





「では、お話ししますね……」





少女は、


口から真実を溢し出す。





俺は、


それを受け入れる。








「あなたのいた地球は、滅んだんです。ついさっき。第三次大戦が始まって、すぐに人口の99.9%が死に、消滅しました。そのころ爆睡していたあなたは緊急事態に気がつきません。そんなあなたを、死ぬ前にかっさらってきたのが、この私です」





なんだそれ。


第三次大戦?


そんなもの、前振りも何もなかった。


でたらめじゃないのか?


なんだよ、それ。





俺の怪訝な顔に対して、彼女は


「始まって、すぐ終わったんですもの。知らない人のほうが多いですよ」





ほう、と声を出してみる。





なんとなく納得した気になっておこう。


理解が追い付かない。





「んで、手助けって何をしたらいいんだ?」





「いえ、特になにも」





!?


「言ってることがさっきと違いますよ?」


なんで急に敬語なんですか、と少し笑う。


「あなたは、『サンプル』なんです。いるだけで、運命を変えるカギになる」


「じゃあ、いるだけでいいのか?」


はい、と微笑む彼女。


「今は、私のお姉ちゃんが他の地球を救う手助けをしに行っています。私は、今は特に何も」


「他の地球が滅ぶのを防ぐことで、あなたのいた地球をもとに戻せるかもしれないんです」


続けて。


「これは想定外の事件です。神様も、一人採れれば上出来、とおっしゃっていましたし」


神様!?


「神様って、何だ?」


ふと気づいた顔をして、


「そういえば、自己紹介がまだでしたね」


「私の名前は、アビス。救済天使です」


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