アビス
るぎおん
第1話 遭遇
『いつかの僕へ。
世界は、崩壊した。
夢から、醒めてくれ。』
意識の覚醒。冷たい空気を吸い込んだ。
ほほに柔らかい感触を受けている。
体は固いところに投げ出されていてどうにも節々が痛い。
目を覚ます。
「どこだ、ここ……」
何も見えない。暗い。
少なくとも俺は、ベッドの上で寝ていたはずだ。
体が固いところにあるのはおかしい。
手を動かそうとして、体に血が行き渡る感覚を覚えた。
じわりじわりと熱が伝わっていく感覚。
指先がやっとピクリと動いた。
起きるときに体が痺れるのはかなり久しぶりだ。
一体全体、俺は何時間ほど寝ていたのだろうか?
体が軋む音を聞きながら、どうにか腕を動かして辺りの状態を確認する。
つるつると滑る。フローリングかも。
まあ、平面のようで、特に何にも当たらなかった。
続いて、先程から当たっている柔らかい物が何かを確認しようと、手のひらを頬のあたりに当てた。
およそ無機物ではない感触。
むに、とつかんでしまう。
ぴとりと密着し、指先が少し沈み込む。
ほんのりと暖かいそれの上の方から、音がしてきた。
「初めまして。最後の地球人さん」
がばっと声のする方へと首を回した。
ビキビキビキッとおよそ人からしないような音と苦痛に悶えながらも目を凝らすと、ぼやけた輪郭が写し出される。
俺の頭の上にあったのは、一人の少女の小さな顔。
年端もいかないような少女の、あどけない話し声。
「体調の方は、いかがですか?」
髪の毛をそっと撫でられる。ひどく愛おしい物を扱うような手つきで。
まるで、すぐ壊れてしまうものを慈しむような手つきで。
彼女の口から、二言目が漏れ出した。
「それはさておき、そろそろ私の太ももから手を離して欲しいのですが」
バッと反射的に手を離す。体の痛みにもいい加減なれてきた。
「ごめんなさい!」
思ったよりも大きな声が出た。
慣れてきた暗闇に浮かぶ少女の顔は、少し困ったような笑顔を浮かべていた。
少女?
俺の知り合いに、こんな綺麗な女の子はいない。
一体なんだ?何がどうなってる?
衝撃の事実。
その一。
ほほに当たっていたのは、少女の太ももだったということ。
知らない少女に膝枕をされるというよくわからないシチュエーションだが、
それをかき消す、より衝撃的な事実がもう一つ。
その二。
この子、「最後の地球人」って言ったか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます