16‐4「クローバーとフィーネ」♧
スペードとタアハが走り出したのを見てフィーネが弓を構える。
「……フィーネ、ボクはエルフの村の人たちと出会った。皆心配していた」
咄嗟に叫ぶ、一瞬フィーネは弓を構えるのを止めずに矢を放つ。狙いはタアハだった、タアハはそれをひらりと躱した。
両手で頬っぺたを叩く。ボクがしっかりしないといけないんだ。弓を構える、ボクは魔王たちだけでなく2人の動きを読んで2人にも当たらない様に狙って道を作らないといけない。
気を引き締めると弓を構える。
「……狙うのは、フィーネだ」
声を震わせて口にする。もう生きていないと知っても尚エルフの村長さん達のことを想うと胸が痛んだけれどやるしかない。
弓を構えて矢を放つ。
でも、まるでボクが当てると確信していたようにフィーネはそれを右に避けて躱した。その状態で跳びながら矢をボクに向かって放つ。
頭に直撃だ。
悟ったボクは咄嗟にしゃがむと矢は後方に突き刺さる。とりあえずフィーネをこちらに引き付けることには成功したみたいだ。
弓を構える。それと同時に矢が跳んできた。今度は左に避けながら額の汗が浮かぶ。
……フィーネの方が打つのが早い。
どうしようもない事実が突き刺さる。でも、やるしかない。向こうが2発撃ってもボクが1発を当てればボクの勝ちだ。それなら……
「『ウィンディ』! 」
この速い『風の矢』で一撃で射抜く。タイミングはフィーネが次に矢を放つときだ。その瞬間だけは彼女も避けることができない。ボクはただその時を待った。すると遂にフィーネが矢を放つ。
……今だ!
それを見てボクも矢を放った。『風の矢』は想像通りフィーネの矢よりも早くお互いの立ち位置の丁度半分の地点を通過してフィーネの左胸を貫いた。
……やった。
喜ぶのも束の間、残る彼女が放った矢をみて驚愕する。その矢の狙いはボクではなく倒れているダイヤだった。
「ダイヤ……」
声を出すも間に合わない。彼女は体力を使いすぎて咄嗟の行動ができないんだ。ボクの弓を邪魔しない様にしてくれていたので彼女を守る盾もない。
……間に合って
ボクは慌てて彼女の前に立つ。
「……ぐあっ」
矢はボクの腹部を貫いた。
「クローバーさん、ごめんなさい。私のせいで……すぐ治します。『ヒール』! 」
痛みが彼女の『回復魔法』によって和らいでいく。「大丈夫」と彼女に返してまだ安心はできないとフィーネを見る。するとフィーネはまだ動けるようで弓を構えていた。
今狙われたらまずい。反撃しようと弓を構える。
「……くっ」
ダメだった、弓を構えようとすると激痛が走って弓を落としてしまう。
「クローバーさん、ごめんなさい。今魔法を……」
「……ダメ、まだタアハもスペードもたどり着いてない。まだボクがは囮になれる」
「それは……」
ダイヤが何かを言いかけた時だった。フィーネがくるりと向いて矢を放った。その先には……魔王がいた。
「馬鹿め、無策で突っ込んでくるとは、この盾を忘れたか。……ぐっ、貴様どうして……」
魔王が舌打ちをしながら剣を振るう。すると矢はたちまちに消えてしまった。
矢は……届かなかった。でも……
「今度こそお前を倒す」
……でも、タアハは魔王に辿り着いた。フィーネのお陰で、盾に阻まれることなく。
フィーネに視線を移すと彼女の口が動いていることに気が付く。
「お父さんと、みんなをよろしくね」
彼女の口はそう動いているように見えた。ボクは彼女に対して頷くと彼女はニッコリと笑って消えた。
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