9‐7「仲間だから」
4人で港に泊まっているディール達の馬車に戻り心配をかけたお詫びとクローバーの紹介をした俺達は荷物を取りに戻った彼女を見送った。
「トーハさん、ちょっとよろしいでしょうか」
クローバーの姿が人通りが多くなった通りで見えなくなると同時にダイヤがこちらをみて深刻そうに切り出す。みるとスペードも暗い顔をしていた。その様子を見て気を引き締めて答える。
「いいよ」
「その、クローバーさんのことなのですけど……」
そう言うと彼女はクローバーが町の人達に守られていて本人が知らない内に援助を受けているという話を聞いた。それで彼らにお礼に伺うとしてそれを彼女に知らせるかどうかで悩んでいるようだ。
「どうしましょうか」
難しい問題だ。クローバーは一人ではなかった、という事実は彼女にとってはどう映るのかは分からない。ショックを受けるかもしれないのだ。ここに来るまでの彼女は口数が少ないものの本当に嬉しそうだった。またすぐに彼女にショックを受けるかもしれないことを話してもいいのだろうか?
恐らく彼女達も同じ気持ちなのだろう。俺もどちらにすればいいか決められない、が決めなければならない。
「話そう」
2人にそう告げる。
もしかしたら後々旅の途中で彼女が援助されていたということを知った人物と出会って直接聞くなんてことがあるかもしれない。でもそこで直接お礼をしたい、謝りたいと考えてもそれはこの町を遠く離れたとしたら彼女にはできないのだ。そうすると再びこの町を訪れるまでその後悔を抱いて旅をすることになるだろうしそれは俺達も同じだ。それならばタイミングは今しかない。となると次は誰が話すかになるけれどそれはもう決めてある。
「俺が話すよ」
「いえ、話すのは私が。盗み聞きをしたのは私ですから」
ダイヤが胸に手を当てて言う。
「いや、待てよ。そういうことならオレが」
今度は彼女が言う。言い出しっぺの俺がやるべきだと思っていたことだけれど2人とも譲る気はなさそうだ。
「分かった、じゃあ3人で話そう」
こうして、俺達3人でこの話をすることになった。
♥♢♤~~
緊張で早鐘をうつ心臓を抑えるように呼吸をしながらディールの店の手伝いをしてクローバーを待つこと数十分。クローバーが荷物を持って姿を現す。俺達はディールに断りを入れると彼女の元へと向かった。
「クローバー、話があるんだ」
「何」
彼女が首をかしげるが俺達の表情から何かを察したのだろう。その声は少し震えているようだった。
「実は……」
そう切り出すと俺達はダイヤが酒場で聞いたことを話した。
♥♢♤♧~~
「……知らなかった」
愕然としてクローバーが口にする。
「結局、ボクは一人で生きているだなんて思いあがっていただけだったんだ。そんなにボクのことを思っていてくれたなんて……どうすれば」
「クローバー……」
「クローバーさん、一緒に行きましょう! 」
「そうだ、オレ達は仲間だろ! 罪を背負ってこその仲間だ」
3人とも気持ちは同じだったんだろう、俺が言おうとしていたことのほとんどを2人に言われてしまった。しかし口を開きかけた以上は俺も何かを言わなくてはと考える。
「……俺の金を遠慮なく使ってくれ」
「いや、それには及ばない」
彼女はそう言ってくるりと身を翻らせる。
何ということだ、こういう場面で金銭の話をした上に拒否をされてしまった。なんと空しいことか。
俺がショックを受けていると彼女がそのまま人差し指を向ける。
「この町を出てすぐのところに昔大富豪の人が住んでいた豪邸がある。遺言でそこの謎を解けば豪邸にある宝は全部もらえるらしい。だから……」
そこで彼女は言葉を切るとチラリと俺達のほうを見た。
「……一緒に来てくれないかな、ボクも一度挑戦したけれど、分からなかったんだ」
その言葉を聞いて思わず頬が緩む。
「勿論だよ」
俺は力強く答えた。
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