9‐6「3人目の仲間」

 作戦は成功し俺は今、スペードに輪の部分をつままれているという状況であったがクローバーとダイヤのダイヤの『盾の魔法』を隔てて見つめあっている。


「騙したの? ううん、泥棒のボクには相応しい結末だ」


 盾に触れながら膝をつき涙をにじませながら彼女が尋ねる。


「いや、騙してないよ。最初に話した通り2人が幸せになれる方法を述べただけだ」


「そう、確かにこれでボクも兵士に突き出されれば楽になれるかもしれない」


 彼女は俯き口にする。スペードを見上げる、どうやら彼女は俺の要望通りこの状況を静観してくれているようだ。


「いや、そんなことはしないよ。俺はただクローバーに決めて欲しかっただけなんだ。嫌なら俺が合図を送ってその魔法を解いてもらうから逃げて貰っても構わない、とにかく聞いてほしいことがあるんだ」


「何? 」


 上目遣いで俺をみながら彼女が尋ねる。


 断られたらどうしようか? いやだとしたら彼女の今後を祈ろう。


 不安を振り払い俺は一度深呼吸をしてから彼女に言う。


「クローバー、俺達の仲間になってくれないか? 」


「え? 」


 彼女が目を見開く、その様子を見ながら俺はパチンと指を鳴らした。すると打ち合わせしていなかったにも関わらず察してくれたのだろうフッと消えたようで手をついていたクローバーの手が空を切った。


「どうして、ボクを……だってボクは泥棒なんだよ! それでもいいの? 」


 俺は頷く。


「別に構わないよな、スペード」


「ああ、オレはトオハが良いなら構わねえよ。こんなとこからあの塔まで正確に狙いをつけるなんてのも見せてもらったしな」


 そう言ってチラリとはるか遠くにある塔を眺める。確かに、彼女の言う通りここから命中させたというのは改めて思うと仲間になってくれるとなると心強いほどの腕前だ。


「じゃあ、決まりだね」


 俺が彼女に笑いかける。しかし、彼女はまだ不安そうな顔をしていた。


「でも、まだダイヤって人が嫌がるかもしれない」


「それなら心配いりませんよ」


 その声とともに彼女の背後からダイヤが姿を現した。彼女は突然背後から現れて腰を抜かした様子の彼女に微笑みかける。


「間近で見て良い人なんだなと確信しましたし、スペードさんと話し合ってスペードさんが反対の場合は塔から指定された屋根の反対側を向かない、私が反対なら魔法を使わずに彼女をそのまま逃がすと決めていましたから」


 あの手紙からメッセージを読み取ってくれたばかりかそんな合図も決めていたなんてスペードから先ほど聞いていたとはいえ頼もしい限りだ。


「そういうわけだからこれから宜しく。クローバー」


「よろしくお願いします」


「よろしくな」


 彼女は信じられないというように目をぱちくりさせるもスペードの差し出した手を掴み起き上がる。


「ありがとう、よろしく」


 彼女はにっこりと笑って言った。


 



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る