6-4「美味しい依頼の内容」♤
デュエルが終わり闘技場で互いに剣を下ろしたオレとラッドは握手をする。
「まさかあのタイミングでフェイントとは……お見事です」
「単なる初見殺しだけどな。それよりもあの『風の魔法』の使い方、びっくりしたぜ」
「お世辞は結構ですよ」
「いいや、世辞なんかじゃないさ、ゴールドランクってすげえんだなって痛感したよ」
実際、世辞ではなかった。これが実戦だったら加減ナシの必殺技の時点でオレは負けていたからだ。だから勝敗は関係ない。
だけど御館様の亡霊との戦いの時のフェイントをできたのは良かったと思う、それに剣と魔法を組み合わせるって戦法を知れるという収穫があった。それに……
受付嬢の肩へと手を置く。
「なあ、オレの実力分かっただろ? プラチナとは言わないがゴールド……シルバーランク位にはしてもらえねえか? どうしても魔王のモンスターと戦いてえんだ! 」
感情が高ぶって思わず顔が近くなる。
「そ、その件ですが……」
受付嬢が額に汗を浮かべて後ずさりする。
「魔王のペット、と言われているベヒーモスなら倒しましたよ」
背後から声が響いた。振り向くと言葉を発したのは先ほど戦ったラッドだった。
「なんだって! ? 」
驚き頓狂な声をあげる。彼は頷いた。
「とはいっても私だけではなくプラチナランクのコールさんとレイズさんにセカマさんと大勢での戦いでしたが」
「まあ、アレは熱戦だったなあ、あの時はオレェも死を覚悟したぜぇ」
突然のことで驚いて言葉が出ない。しかし考えてみればこれほどの実力者が数人いればおかしくはないだろう。
「参ったな」
オレは頭を掻く。トオハに見栄を切った手前手ぶらでは帰り辛いぞ。かといって他の依頼で時間食うのもなあ……
「そういやそのプラチナランクのコールってのはどうしたんだ? 」
何気なく気になった。
「そういえば、コールさん達見えませんでしたがどちらに、一緒に向かうはずでしたがこうも姿が見えないとなるともしかして私を待ちきれずに2人だけで! ? 」
「いや、ラッドのせいじゃねぇ、確かに今回の依頼はベヒーモス並みに報酬は良かった。でも中身は大したことじゃねえからあの2人だけで行くことになったのさぁ、それで報酬は山分けってんだからこっちとしてはうめぇ話よ」
そう言っていつの間に持って来たのか酒が入っているであろうコップを傾けぐびぐびと中身を飲み干した。
「ベヒーモス並みの報酬で、大したことないって変わったこともあるんですね」
ラッドが感心したように言う。オレからしても眉唾ものだ。よっぽどレアなモンスターでないと割に合わないだろう。もう少し早ければオレ達が受けたのになあ……
「それで一体どういった内容で? 」
遂に核心に入った。オレは素早くセカマに視線を向ける。その時偶然、彼の背後にいるダイヤの顔が目に入った。彼女の顔はこれまでになく青ざめていた。
どうしたのか尋ねようとしたその時だった。セカマの声が耳に入る。
「ただのゴブリン退治さぁ、『顔に傷のある』と指定があるらしいけどなぁにただのゴブリンよぉ、すぐに戻ってくるさぁ」
なん……だと……
顔が青ざめていくのが自分でも分かった。
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