6-3「ゴールドランク騎士とのデュエル」♤

「おうラッドいいとこに来てくれた、この嬢ちゃんとデュエルしてくれねえか? こいつはオイラァと同じAランクだ、嬢ちゃんも文句ねえだろ? 」


 ここはどうするべきか。正直ここの選択は重要だと思う。オレの選択は……


「デュエルを受けようと思う」


 それを聞いたダイヤは驚き理由を尋ねようと囁きかける。


「どうしてですかスペードさん、今ここで受けても……危険です」


「平気さ、相手をやっても捕まらないなんてルールはねえから死ぬことはない。それにこれはチャンスだ、ここでオレが相手を倒せばSランクだろうと受けさせてくれるかもしれねえ」


 オレが受けると宣言したのであとはラッドという騎士次第なんだが、当の本人は参ったというように肩をすくめながらも承諾した。


「畏まりました、それではデュエルの会場へとご案内いたします」


 そう言うと受付嬢は受付を出てこちらに来たかと思うと飾ってある2体の鎧の間に立ち「オープン」と呟くと壁が隠し扉の様に開き地下への階段が姿を現した。


「本来、この闘技場は酔って店内で戦闘を始めようとするものを中に隔離するためのものでそこまでされて戦闘を始めるものはおらず戦闘が行われることは滅多にないのですが……ご存知の通り何が起きても当ギルドは責任を持たず自己責任でお願いしますね」


 それだけ言うと灯りを手に先頭を取って歩いて行った。オレとダイヤの後にラッド達が歩いてくる。


「『フラッッシュ・マキシマム』! 」


 階段を50段ほど下ると受付嬢が呪文を唱えると灯りが大きくなるとともに大きな酒場位の広さの闘技場が視界に広がる。


「それでは、両者位置に構えて! 」


 そう言われて下に白線がある定位置に付くと刀を構える。妖刀の初陣だ!


「それではデュエル、開始いいいい! 」


 受付嬢が大声でデュエル開始の宣言をした。


 デュエル開始の宣言とともにオレは駆け出す。


「はあっ! 」


「甘いですよ、もらった! 」


 オレの速さから自らの間合いに到達する速度を把握したのだろう。剣を振りかぶる。


「どうかな! 」


 それをみて一歩後ろに下がる。すると間合いをずらされたラッドという騎士の剣は虚しく空を切る。


「もらったぁ! 」


 オレはその隙を見逃さずに勢いよく切り込んだ。


 ガァンッ!


 しかし、それで勝負はつかなかった。流石はAランク、オレのフェイントをすぐさま見抜き切っ先が当たるか当たらないかの寸前、剣を合わせたのだ。


「お見事です」


「へっ、そう簡単にはいかねえか……なら! 」


 依然こちらが有利な状況にあるのは変わらねえ、一気にラッシュを仕掛ける。


「オラ! オラぁ! オラオラオラ! 」


 キィンキィンカァンキィン!


 しかし、オレの剣は全て隙1つ見せずに防がれてしまう。


「ほう、ここまで荒く攻めながらも隙は一切ない、お見事ですね」


「そりゃ、どうも! 」


 会話をしながらも剣を撃ち続けるオレと防ぎ続けるラッド。


 一向に疲れをみせる気配がねえ……何だ、こいつのスタミナは無限かよ


 オレが弱気になったのを悟ったのかラッドは不敵に笑った。


「それでは、Aランクの力をお見せしましょう」


 キィン!


 言い終わらぬうちに剣と刀がぶつかる。するとこれまでと違い一気に剣に力を込めるラッド


「こ、ここで押し返されてたまるかあ! 」


 負けずに力を込めるも攻めすぎて体力を使ってしまったせいか徐々に押し戻されていく。


 …………このままじゃ、負ける。


「こんのおおおおおおおおおお! 」


 最期の力を振り絞るように刀を相手の方に少し押し返すと同時に勢いよく後ろへと跳ぶ。


「まさか、最後に押し返すほどの力があったとは」


 ラッドが驚いたとばかりに言う。


「ですが……私としては距離が取れればこの結果も有難いのですよ。私をAランクとする必殺技をご覧にいれましょう、『ウィンディ』! 」


『風の魔法』が発動しラッドの剣が風に包まれる。


「おい、そいつぁはやめとけラッド」


 黙ってみていた酔っ払いのセカマの態度が事の深刻さを物語る。それを聞いたダイヤが不安そうな顔をしていた。


 さっき奴は距離を取りたいと言った……ならば!


「させるかぁ! 」


 オレは再び駆け出し距離を詰めた。


「遅い、『絶技・神風斬り』! 」


 そう言って間合いにも入っていないのに剣を振る。すると剣を包んでいた風が斬撃となって迫ってきた。


「スペードさん! 」


「ぐっ! 」


 オレは咄嗟に刀を盾代わりに構え斬撃を防ぐも風圧により飛ばされてしまう。そのまま勢いよく壁に叩きつけられた。


「クソっ……『風の魔法』にこんな使い方があったなんて…………」


「手加減はしましたが、それでもまだ立っていられるとは流石ですね」


 ラッドが感心したように言う。


 クソォ、あの『風の魔法』は厄介だ……待てよ良いことを思いついたぞ!


 オレは称賛に答える代わりに掌をラッドに向ける。


「『ファイエア』! 」


 呪文を唱えると小さな火の玉がラッドへと向かっていく。それと同時にオレは駆け出す。


「無駄なことを……ウィン……は! ? 」


 ラッドは呪文を唱える前に気が付いたようだ。そう、風は火を大きくする。だからオレが先に『火の魔法』を唱えその後に『風の魔法』を発動するとラッドの付近で熱風が巻き起こることになる!


「貰ったあ! 」


 奴が剣で火の玉を掃ったのをみて上から斬りかかる。


「そうはいきません! 」


 先ほど同様咄嗟に掃った剣を戻し防ごうと横に構える。


 流石Aランク、でもその咄嗟の動きは2回は続かねえはずだ!


 オレは斬りかかろうと振り下ろした手を止めて片膝を曲げる。


「なに! ? 」


 オレはがら空きの懐に刀を差し込んで寸前で止めた。


「……」


「…………」


 沈黙が訪れる。その沈黙を破ったのは受付嬢だった。


「……勝負あり! 勝者、スペード・ナイト! 」

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