5-3「天守閣の仕掛け」

 「参ったな」と頭を掻く。天守閣の壁から窓、床とくまなく触って回ったけれど隠し扉もそのスイッチもどこにも見つからなかったのだ。


 分かりやすく掛け軸何かがあればいいのに……


 と悔しがる。「まさかこの天井に何かがあるのだろうか? 」と思い立ってジャンプして回っても何も手ごたえはなかった。


「どこにもありませんね、ということは他の階に仕掛けがあるのでしょうか? 」


 ダイヤが首を傾げながら恐ろしい考えを口にする。この作業を6階あるこの城でやって回るなんて途方もない話だ。


「いや、まだ探してないところがあるぜ! 」


 スペードは窓に近付きながら言う。そう言えばスペードは窓から上を見上げていた。


「まさかスペード」


「ああ、そのまさかだ! 」


 勢いよく答えると窓から飛び降りた。


「スペードさん! ? 」


 ダイヤが慌てて駆け寄るも窓を見て安堵のため息を吐く。スペードは城の屋根に乗っていた。


「城のてっぺんに何かないか見てくるわ! 」


 そう言うとスペードは屋根の尖っていて高くなる部分まで歩きジャンプをして上へと上がったようだ。


「私では届きませんが……もしかしたら敵がいるかもしれませんからトーハさんも言ってあげてください」


「でもダイヤ1人じゃ……」


 俺の問いに彼女が笑顔で返す。


「ご心配には及びません、『シルド』! 」


 彼女の周囲に半球形の盾が出現する。形をある程度イメージして変えることができるらしいけれど、どこから敵が来るのか分からない今、安全面ではこれが一番の形だろう。強度は身を以て証明済みなので彼女はこれで大丈夫だろう。


「そういえば、強度って変更もできるの? 」


 ふと思い付きだけど気になったことを尋ねる。形を自由にイメージできるなら強度も……と考えたのだ。


「強度ですか! ? 練習しておきます! 」


 彼女がハキハキと答える。時間がかかるとはいえ何とかできるようだ。とはいえ今すぐトランポリンみたいにして飛んでいくというのは今は出来ないようだ。


「頼むよ、といけない! 行ってくる! 」


 あまり遅くなってスペードと距離が話されるのはマズい。「気をつけてください」という言葉を背に窓へと飛び降りスペードの後を追った。


 屋根瓦を進み頂上へとたどり着く。左右に大きなシャチホコが存在しスペードは右側のシャチホコを調べていた。彼女に近付く。


「見つかったか? 」


「いや、残念ながら左にも右にも何もなしだ」


 彼女がお手上げとばかりに両手を挙げる。屋根に何かあると言った説はハズレだったらしい。


「じゃあ帰るか、ダイヤが待ってる」


 そう言って来た道を戻るように降りて行って天守閣最上階へと戻った。


「大丈夫でしたか? 」


 どうやら俺が言った強度の調節を練習していたようで盾をトントンと叩きながら俺達が戻ってきたのを見てダイヤが声をかける。



「何もなかったよ」


 スペードの代わりに俺が答える。しかし、天守閣にも最上階にもないとなると……


「あの刀か? 」


「いやいや、あれは触ったらマズいやつだろ」


「そうですよ、あんなに大切そうにケースの中に入っていて触ったとしれたら……」


 俺の考えを聞いて2人は即座に否定する。2人の反応を見て俺は刀に触るのを止めるべきと考えるばかりか余計に触りたくなった。


「それだよ、調査に来た冒険者は……いやここの人々と調査した冒険者たちこそこの刀に触ることは出来なかったはずだ。ということは鎧が消えたにも関わらず残っているこの刀が御館様の亡霊をみつける鍵になっている可能性は高い」


 俺は説明しながらケースを外す。2人はそれを止めなかった。そして俺は飾ってあった刀を手に取る、その時カチッと音が聞こえた気がした。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ!


 俺が刀を手に取った瞬間、けたたましい音とともにケースがあった付近に階段が出現した。


「まさかこの刀が鍵だったなんて……すげえなトオハ! 」


「完全に裏をかかれましたね、流石ですトーハさん! 」


「まあ、とにかく行こうよ」


 正直半信半疑だったのでそんなに言われると背中がむずがゆくなるので急かす様に声をかけ俺が段差に足をかけた時だった。


 シュンっ! という鋭い音とともに何かが俺目掛けて放たれた音がする。俺はすぐさま背中の剣を抜き放たれたものを掃うように剣を振る。


 カキィン! っと激しい音がした後に俺が掃ったものが床に突き刺さった。攻撃してきた者に隙をみせないよう横目でみる。放たれたものは薄く十字型の薄い刃物……手裏剣だった。


「ほう、咄嗟に拙者の放った飛び道具を防ぐとは……お主なかなかのやり手と見た」


 その言葉と共に身体を目を除き黒い忍び装束に身を包んだ1人の人物が姿を現した。

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