1-12「オパールとの再会」
「凄い、あのサイクロプスを倒しちゃうなんて………凄いですトーハさん!」
ダイヤがメラメラと燃えているサイクロプスを見た後にこちらに視線を向け信じられないとばかりに声を上げる。幸いパチパチと未だにサイクロプスを燃やす炎は消えないものの周りは整備されていて土しかないため周りに燃え移るという心配はなさそうだ。
「いや、皆のお陰だよ。ダイヤと………ルイーダがいないと奴は倒せなかった。」
彼女はルイーダの名を聞き悲しそうに顔を両手で覆った。
「行こうか………」
ルイーダがいる木のほうを見つめながら彼女に声をかける。
「………はい」
彼女は小さく頷くと俺についてくる形でルイーダのいる木へと急いで向かった。
「ルイーダ………!」
ルイーダの遺体の前でもたれるように涙を流すダイヤ。
彼のことを詳しくは知らないが彼はサイクロプスを前に彼なりに勇敢に戦った───彼をこの森の入り口近くに彼をこのままにしておくのも可哀想だと思う。
「君の村に墓地は?」
「あります。」
「じゃあ、墓地まで俺が運んで………いくのは無理か。」
咄嗟に連れて行こうと口が動くも冷静に考えると俺はゴブリンだ。彼を運んで村に行くとなると
「ダイヤ!!!」
大きな声が聞こえた。………人だ!見つかってはまずいとなぎ倒された木の横に寝そべり隠れた。
「その声、お父さん!」
「おお!ダイヤか!大きな叫び声が聞こえたので心配になってきてみたら……よかった!!!」
こちらに近づいてくるにつれて大きなバッグを持った重装備の男の姿が明らかになる。それは───先ほど村であった男だった。先ほど村で俺と戦い頬に傷をつけた男だ。心なしか傷がズキズキと痛む。
「ダイヤ!」
「お父さん!」
攫われた娘とその父親はハグをする。原因を作った張本人とはいえこの光景は感動的だ。2人が再会できて本当に良かった。
しかし、その時間は長くは続かなかった。変わり果てたルイーダの姿がダイヤの父親の目に入ったのだ。
「これは、一体………」
彼は驚いて辺りを見回す。なぎ倒された木、サイクロプスの死骸と次々とこれまでの森を知っているのならば目を疑うような光景が広がっていた。
「あのサイクロプスを倒すとは………ルイーダ君がやったのか?」
目を丸くして男は娘であるダイヤをみる。
「ううん、違う………」
とダイヤは否定しようとして口ごもった。
俺の存在を明かせないと判断したのだろう。ゴブリンがサイクロプスを倒すなどとは到底信じられない話であるし、更にそのゴブリンには異世界から来た男が入っているなんて夢のような話だ。そもそも、この世界では娘を攫ったという前科アリ。故に話して紹介をしたところで斬り殺されるのがオチだと………
しかし、こちらはそうも言ってられなかった。ダイヤの心遣いには感謝しているしそれゆえ申し訳ないと思うが、俺はムクッ!と身体を起こし男のほうへ歩み寄る。
「ゴブリン………」
男の目は俺の姿を捕らえた。ゴブリンが目の前に現れたので瞬時に戦闘態勢に入りダイヤを話し後ろに匿いつつ剣を取るダイヤの父。先ほど娘をみつめていた目は今ではこちらを激しく睨み、視線だけで睨み殺されそうだ。
この恐ろしいまでの切り替え、村で剣…いや棍棒を交えたときから思っていたがこの男はかなりの強者で、真の戦士というのはこういう人のことをいうのだろうと痛感する。
「やめて!お父さん!」
しかし、彼は娘が制止するように後ろから抱き着き止めてきたことに戸惑う。
「どういうつもりだ………ダイヤ!!!離しなさい!!!」
彼は娘の行動がどういう意味かわからない、というように声を荒げた。
「私………あの人に助けられたの………サイクロプスもあの人が倒したのよ!だから………お願い止めて!!!」
娘の懸命な制止に、男はこちらを睨みながらも剣を収めた。そして俺の顔を見て何かに気付いたのか口を開く。
「その傷、君は………あのときのゴブリンか。」
俺の頬にはさっき男につけられた傷がある。その傷を見て気付いたようだ。
「あのときは、強引な手段を取って申し訳ありませんでした。実は………」
俺は男に詫びながら、ダイヤにしたように今日1日のことを話した。
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