0-3「ダイヤの覚悟」

「トパーズ兄さん! 突然連絡がなくなってみんな心配していたのよ! いつ帰ってきたの? 」


 私は嬉しさで胸が弾みながら尋ねた。すると意外な答えが返ってきた。


「何を言っているんだ? 僕は旅に出たことなんてないぞ? ははあ、さてはそれで慌てていたんだな! 僕らは旅に出なくていいことになったじゃないか。心配するなよ、僕の時みたいに皆受け入れてくれるさ! 」


 そんな──────私の記憶だと兄さんは3年前に旅に出て突然消息不明に……これは1体どういうことなのだろう?


「僕も最初は親父から剣の才能を受け継いでおいて勿体ない、酷いと魔王討伐に生かすべきだと言われたものだが今では皆受け入れてくれている。ダイヤもきっと大丈夫だよ」

 

 兄は微笑んだ。


「2人とも話は終わった? ならご飯にしましょうか」


 いったいこれはどういうこと──? 何が起こっているの! ?


 落ち着いて状況を整理するしかない、私は確か誕生日前日に目が覚めて朝食を食べて買い物に行って昼食を食べてそのあと──────そうだ! 私はそのあと父の部屋で杖とオーブを手にしたんだった! !


「お父さん! あの杖はどこにあるの! ? 」


「杖? 何のことだ? 」


「オーブがセットできる古い杖のこと! あの杖はどこにあるの? 」


「そんな杖、心当たりがないなあ」


「ごめんよ父さん母さん、ダイヤは冒険に駆り出されるんじゃないかと混乱してるんだ」


「そのことは心配ないって話したでしょう? ほら、ご飯食べましょう冷めちゃうわよ! 」


 これはあの杖の仕業……? あの杖が私にみせている幻覚…………? じゃああの杖を探さないと…………探して冒険者になってお兄ちゃんを探して魔王を倒さないと! ! !


「待ちなさい! 」


 父の部屋に行こうとしたところをお母さんに手を掴まれた


「離してお母さん! 」


「ねえ、ダイヤ貴方と私とお父さんにトパーズ、皆で一緒にご飯を食べましょう? 冷めてしまうわよ? 」


 母の私を掴む手が強くなる

 確かにここではトパーズ兄さんがいるだけではなく私は冒険者にならなくても良いと平和に暮らしを送ることができるだろう。でも、それでも────私の心の中で兄さんが行方不明という事実は消えない! 連絡がなくなったのは、不測の事態があっただけで今もなおどこかで生きているかもしれない! どこかで囚われているのかもしれない! ! そんな兄を放っておくことはできない──────! それに、お父さんとお母さんの顔を思い浮かべる。

 兄さんからの便りがなくなってからも、心配している様子を見せず常に明るくふるまってくれた父さんと母さんの努力を──────無駄にすることなんてできない! ! !


「ごめんなさい、お母さん! 」


 私はお母さんの手を振りほどき父の部屋に入った。


「えっ……」


 私はあまりの事態に思わず声を出してしまった。父の部屋だと思い入った部屋は何もない、真っ白な場所だった。


「あなたの冒険に挑む姿勢、覚悟………………見せていただきました」


 声のする方向を向くと黄色に輝く人? がそこに立っていた。


「あ、あなたは一体……? 」


「私はこの杖に宿った精霊、あなたがこの杖を所有するにふさわしいか試させていただきました。これからは貴方が私のご主人さまです。私の力、何卒お使いくださいません」


 妖精は丁寧にお辞儀をした。この杖に宿る精霊さんは優しい妖精のようでよかった……

 でも、私にこんな素晴らしい杖の持ち主が務まるのだろうか? それに仲間の問題もある、これほど強い杖だとアピールしてもろくに攻撃魔法を使えないと以上、どのみち攻撃魔法の使えない魔法使いと冒険者に誘われにくいだろう。となると──────ルイーダの顔が浮かび暗い気持ちになる。


「どうかしましたか? 」


「いえ、その、パーティにが加えてもらえるのかか不安で……」


 私は掻い摘んで事情を説明した。


「なるほど、つまり心強い仲間が欲しくて困っていると……」


「はい」


「では貴方の願いはそれでよろしいですね? 」


「え? 」


 私は妖精の予想外の言葉に目を丸くした。


「願いを……叶える? 」


「ええ、見事試練を乗り越えた貴方には1つだけ願い事を叶える権利が与えられます」


 渡りに船……まるで夢のようだ! 私は思わず頬をつねると痛みを感じた。夢じゃない……! 私の心は弾んだ!

 いやでも待って


「何でもということは魔王を倒してという願いも叶えることができますか? 」


「いえ、それは不可能です。魔王は私の魔力以上の力を持っています、それゆえ奴に直接的干渉をすることはできません」


 もしやという思い付きだったが楽な道はないということらしい……


「じゃあ……頼れる仲間が欲しいです! ! 私を助けてくれる……最後まで私と一緒に戦ってくれる仲間が! ! 」


「畏まりました」


 妖精はそう応え辺りは光に包まれた──────

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