第4話 校庭でおにぎり
「ねえ、アタシおなか空いたわよ、なんか食べよ」
「あっそっか、ごめん、もうお昼だね、うっかり」
「どっか、ランチとか行くぅ~?」
「えっ、う、うん、い、いいけど・・・」
「でもアタシ、学校の近くのコンビニでもいいよ」
「なんか悪いよ、それって、でもそれもアリか!」
「だって、クルマでどっか探して往復するのも、ね」
「うん!そうだよね、実は僕もほんとはね、ずっと
裕子さんと一緒に居たいんだぁ、学校のところで」
「じゃあ、決まりね!」
「はい!コンビニ弁当でごめんね」
「ううん、アタシ鮭のお握り~!」
「えっ、いいのそれで?じゃあ僕はタラコのお握り~」
「うふふふ」
「えへへへ」
二人は近くのコンビニへ行って鮭とタラコのお握りを
二個ずつと温かいウーロン茶二本を買って来た。
「ねえ、裕子さん、校庭のベンチで食べようよ」
「ええ、いいわよ」
「折角のデートなのに、こんなコンビニお握りでさぁ
ケチってるみたいで・・・ごめん、気が利かなくて」
「ねえ、アタシはそれがいいの、さっき言ったでしょ」
「うん、僕も・・・」
「へえ~、いつもは適当に間に合わせで買って食べてる
お握りなのに、今日はとっても美味しい~」
「良かったぁ~、僕もさ、なんか遠足みたいだね」
「そだねぇ~~~、ふふふ」
春浅い、肌寒い朝だったのに、お昼時ポカポカと陽気が
射してうたた寝気分のようで、そよ風が心地よく吹いていた。
余りにも裕子さんとのお昼タイム、居心地が良くて少しだけ
裕子さんの方に頭を向けてベンチで横になった。
「髪薄いよねぇ~、うふふ」
裕子さんが僕の髪の毛を触って撫で撫でしてくれた。
「ダメだよぉ~、気にしてんのにぃ~」
って、言いながらも僕は余りにも嬉しくて涙が滲んでいたのを
裕子さんには気付かれないように、そっと片手を自分の額に
翳した。
「まぶしいの?」
「ううん、木漏れ日がちょっとキラキラしてさ~」
僕は全然まぶしくも無いのに、そう言って誤魔化した。
ベンチの後ろで校庭の木々がそよ風に揺れて、裕子さんの
優しい香水の香りが僕の頬を伝わってきて眠気を誘った。
「あなたねぇ、寝ちゃダメよぉ~、ふふふ」
「うん、うん、僕ね、今ね、とっても気持ちいいんだよ」
「アタシもよ、爽やかな天気で良かったわ」
「そうだね、ずっとこのままで居たいね」
「子供みたいなこと言って、でもほんとはアタシも・・・」
「裕子さ・ん・・・・」
「なあに」
「ううん、なんでもないよ~」
のどかな校庭の昼下がり、しばらくは二人だけの時間が
ゆったりと流れていった・・・
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