第5話 汚れなき者
「ここまで出かかってるんじゃがなー」
白衣の賢者の伝承を思い出しながらシロは腕を組み悩んでいた
そうしている間にも勇者パーティは劣勢に陥りつつあった
「おいシロ早くしろ!!」
「そろそろ持たんぞ」
「・・・」
ゲオと相対している呪われた鎧も疲れが出てきているようだ
「さーそろそろ年貢の納め時だぞ裏切り者」
「・・・」
「あの鎧もやべーぞ」
弓使いが鎧のほうを見てよそ見した瞬間
後ろから魔物のこん棒が頭上に振り下ろされた
その瞬間その魔物のあごは紅に輝く鉄拳に打ち砕かれ
その魔物は洞窟の壁に吹っ飛んだ
「油断するでないわ。馬鹿者」
「うるせーさっさと杖もってこい!」
弓使いの文句も聞かない様子で紅の両こぶしを振り回し
力の限りに魔物を殴り始めた
彼女が一振りするだけでおびただしい量の血しぶきと悲鳴が上がった
シロの顔にも返り血が飛びシロはそれを楽しむかのように笑った
「杖が手に入らないストレス発散だな」
「あれで本当に巫女さんなのかよ」
「巫女らしくない先頭スタイルではありますよね」
シロが装備しているのは鉄拳
そのこぶしは魔物の血を吸いその分だけ攻撃力を上げていく
そのため彼女は戦場に立てばわざと全身に返り血を浴び
宗教の正装である白い衣装を紅色に染め上げる
「きれいごとで人が救えるかよ」
一言一言つぶやくようにいいながら魔物を握り殺す
「巫女だろうが戦闘狂だろうが関係ねー」
魔物を殴り殺しながら再び祭壇を目指す
「ほしいのは救いだ」
シロが結界に入った瞬間全身に激痛が走る
「?!」
「なんだ!?」
「魔物の血を浴びすぎました。シロが結界の効力の対象になっています。」
全身に雷が走るような激痛がシロを襲う
「戻れシロー!!」
「もどれだ?!」
シロは以前にもそういわれた
あなたは巫女です
人々の希望として祈りを捧げればよいのです
清廉潔白、きらびやかで神々しく
安全な場所で人々の傷を癒すのです。
目の前で人が死んでいるのに
救わずに逃げろというのか?
それが神の意志だというのか?
ならば私は神を呪おう
戻りなさい!!
いやだ!放せ!
トンッ
背中を押されたのはその時以来二度目だった
「勇者!!」
何も言わず勇者はシロの背を押した
「ありがとう!!」
涙が出た
自分の意思を応援してくれる人
初めて出会えた同志だった
教祖を切り殺しシロの背中を押した勇者に
自分の覚悟のなさを改めて実感させられたあの日
初めて勇者に出会ったあの日
「あの時私は誓ったのだ。勇者お前の力となり」
継続して全身に走る激痛に耐えながら勇者に押されて杖に近づく
「返り血を浴び、どんなに汚れようと」
懸命に手を伸ばす
「自らの手で人々を救うことを!!」
魔物の血を溢れんばかりに蓄えた手が杖にかかった
かかった瞬間白かった杖の植物部分が紅色に変わり
杖は実体を伴ってシロの手に落ちた
「なるほど伝承のとおりだな」
白衣の賢者は嫁を救うために魔物を殺し悪魔の力を借りた
自らの手を汚さない、汚れない者たちに
悪魔の木でできたこの杖を手にする資格はないのだ
シロは杖を頭上高く掲げた
「ゲオ様どうやらここまでのようです」
「あーあんなの食らったらお前も死んじゃうんじゃないの?」
「私は死にません」
「・・・お前やっぱりその鎧・・・」
「消え去れくそども」
言った瞬間白夜の宝杖の宝石から目のくらむ光が放たれ周囲の魔物は全滅した。
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