第4話 白衣の賢者の伝説

深い深い森の中

ほんのり暗い森の中

漏れた光が民家を照らす

人里離れた森の中

夫婦二人でひっそり暮らす

もとは帝国のお偉いさん

世俗に飽きて森の中

夫婦二人で暮らしてる


そこに魔物がやってきて白衣の賢者の嫁襲う

白衣の賢者は嫁に駆け寄り

魔物を殺して涙した


「お前が助かるなら他に何もいらない

お前が助かるなら私のすべてをささげよう

神だ悪魔だ興味はない

持てる物なら持っていけ

私は他に何もいらない」


強く嫁を抱きしめて賢者は叫ぶ

その手は魔物の返り血で赤く染まり

賢者の服も赤く染まっていた


そこに白衣の賢者はいなかった


白衣の賢者の嫁が目覚めたとき

そこに夫の姿はなかった

あるのは真っ赤に染まった衣服と白く輝く宝石だけだった


白衣の賢者の望みを聞いたのは悪魔だった

悪魔は賢者の言う通り

ありとあらゆるものをもっていった

もっていかなかったものだけが宝石となって残った


嫁は死んでいたのだ

それが運命だった

神は運命を定めあらがうことを許さず

悪魔は嬉々としてあらがいに手を貸した


この出来事は悲報とともに各魔法研究者に衝撃を与えた

当時傷を癒す魔法は存在していなかった

その時の情報をもとに研究が重ねられ

魔力を消費して傷を癒す白魔法が確立された

確立された魔法は白衣の賢者同様悪魔の力を借りたものであり

実際は白魔法どころか闇魔法であることは白魔法界の最大の秘密となった


嫁は悲しみながらも生き

寿命を全うして死んだ


残された宝石と賢者の衣は白衣の賢者の祭壇としてまつられた

祭壇の地下に保管された宝石と赤く染まった衣は

次第に形を変えた

賢者の衣には悪意の種が残されており賢者の衣は木へと変化し

その木が宝石を巻きこみ抱え上げ一本の杖として祭壇に浮かんだ

祭壇の周りには残された宝石の力で穢れたものは近づくことができない

結界を構築された


杖の存在を知り何人もの魔法使いが手に入れようと試みたが

成功するものはいなかった

誰も手に入れることのできないうちに

祭壇は魔王軍の手に落ちた

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