第3話 始まりの魔物

彫刻に彩られた祭壇の中央に真っ白な杖が浮かぶ

その杖は木がねじれあがり上部に大きな玉が巻き込まれている


祭壇の周りには結界が張られており

おびただしい数の魔物がその周りを取り囲んでいる


白の魔法使いのみ結界の中に入り、

残りのメンバーは結界の外で魔物と戦っていた


白の魔法使いが杖をつかもうと手を伸ばす

杖は幻の様にその姿をくらませ白の魔法使いは杖をつかむことができない

むむーっと腕を組み杖をにらみながら悩む白の魔法使い


白夜の宝杖

白魔法を創造した白衣の賢者

その魂を結晶化した宝石をもとに形作られた白魔法最上の杖

この杖から放たれる光は夜を昼に変え、どのような傷も癒すという


「どうすれば手に入れることができるのじゃろう」


「あーめんどくせぇ」


全身包帯巻きの大男が魔物の先頭に立って言う


「そこの馬鹿鎧野郎、お前なんで魔物なのに勇者の味方してんの

おかげでせっかく療養中だったけが人まで駆り出されちまったじゃねーか」


「俺たちまでなんで外出て戦ってんだよ結界の中に入ればいいじゃないか」


「魔物は入れないんだあの鎧が殺されてしまう」


「どうでもいいだろ魔物なんだから」


「そうでもない」


「あの鎧の言う通り白夜の宝杖があった、彼の手助けがなければ我々の目的遂行は難しい。ここで見殺しにはできない」


「それに結界の中にいてもいつまでもそこにいるわけにはいかないしな」


弓をつがえ構えて撃つ

敵の魔物の眉間にまっすぐに刺さりその魔物は絶命した


「おいそこの鎧、魔王軍大幹部ゲオ様が直々に聞いてんだ返答しなさい」


「私は故あって魔王軍を裏切る」


「その故ってのを聞いてんだろーが」


「もはや答える義理はない」


「何?てめーおれを馬鹿にしてんのか」


「馬鹿になどしておりません、ゲオ様あなたに対する尊敬は今も変わらない」


「ジャーどうして?」


「言えません」


「問答無用か、じゃー勝負だな」


「裏切り者は俺がやる!他は勇者の一行をたたんじまえ」


魔物が一斉に勇者一行に襲い掛かった

呪われた鎧は無防備に魔物たちの間をすり抜けてゲオの前まで進み出た


「あんな雑魚モンスターで先駆け将軍に勝てんのか?」


「シロ早く杖取れ!!」


「できるもんならやっとるわいもうちょっと待ってろ!!」


「・・・」


勇者は何も言わず最初に襲い掛かってきた魔物を切って捨てた


先駆け将軍ゲオ

魔王軍幹部の一人で当代魔王不知火が世に生まれいずる前に人類への侵攻を開始した

始まりの魔物とされている

ゲオはなぜか魔王不知火の誕生を予見しており魔王誕生の50年前から現在の魔王城を建築を開始していた

その胆力はすさまじくこの350年の間敗北は2回だけ

1回目は魔王不知火にもう一回は今回の魔王城攻略戦で勇者に負けた

今はその傷を押しての再登場だ


「最近のわけーやつは魔王城の内部のことを何もわかっとらん

いなくなった勇者の捜索に駆り出されて俺が最初に見つけちまった

俺が建てた城だからな!どこに隠れようと俺からは逃れられん」


ごほっとせき込んで血を吐きながらゲオはいう


「さあ勝負だ」


「いざ」


もはや切れ味などは関係ないであろうぼろぼろの大剣を肩に担いで呪われた鎧めがけて大きく振り下ろす

その大剣はゲオの体と同じく傷だらけのぼろぼろだ

しかしその戦った戦場の数だけ魔力が重ねられており

絶対に折れない魔剣と化している


呪われた鎧はその攻撃を盾でいなし

ゲオの脇を剣で刺す


ゲオは少し声を出したが構わず横なぎにする


鎧はそれもいなしてさらに剣で刺す


それの繰り返しだ


「・・・奴はまだ大丈夫そうだな」


「ああだがゲオはしつこいからな」


「そうだなゲオの恐ろしさはそのしつこさにあるいずれあの一撃が当たって敗北となるだろう」


「その前にシロー早くその杖もってずらかろうぜ!!」


白衣の賢者か・・・


杖について考え、白衣の賢者について考え、集中したシロの耳にその言葉は届いていなかった

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