第2話 残月の泉
真っ暗な穴の底にあったのは
青く輝く泉だった
「ぶはっ!!なんだここは!!」
「力が・・・戻っていく・・・!」
「ここは、まさか残月の泉?」
「そのとおり」
空中をふわふわと舞う
袋にボタンの目がついた魔物が騒がしく説明する
「白い魔法使い様のいうとおりここは残月の泉」
「残月の泉といえばかつて太陽と月の英雄が生み出したといわれる聖なる回復の泉」
「それがなぜ魔王城に」
泉に背を向けながら呪われた鎧がけだるそうに答える
「お前らは馬鹿正直に正門からまっすぐ魔王様の居室を目指した」
「確かに距離的にはそのほうが近いが最も困難なルートだ」
血気盛んな弓兵が大声で聞き返す
「どういう意味だ」
「こっちは寡兵なんだ回り道をしている余裕はない」
泉から離れ松明を用意しながら呪われた鎧が続ける
「この魔王城にはかつて人間たちが魔王軍に奪われた武器や財宝が保管されている」
「その泉のように聖域とされる場所も異空間魔法で魔王城の中に移動された」
白の魔法使いが驚きながら答える
「なんと!!」
「魔王城の中にこそ人間界の秘宝が多く眠っているとは・・・信じられん!」
「逆だ」
「当然のことだろう、大事な戦利品をその辺においておけるか」
「このような休息所が魔王城にあるとは思わなんだ」
「つまりはこのような回復ポイントなどを利用していくほうが距離優先で時短の短期決戦よりも有効ということじゃな」
「伝説のアイテムを手に入れて魔王軍を打ち払えるやも」
「俺たちが案内してやる」
勇者の一行は改めて目の前の二人の魔物を見つめた
「お前たちは何者だなぜ我々を助けた」
「お前たちに魔王を倒してほしい」
「魔王 不知火か」
黒の魔法槍の青年が続ける
「歴史上もっとも強く、賢いといわれる魔王、この300年の間ずっと世界のほとんどの地域を魔王軍が支配してきた」
「しかし近年、その勢いも衰えたと聞く」
「そこにいる勇者の活躍もあって現在は世界の半分は人類の手に戻ってきている」
いまだに一言も発さない勇者を指しながら黒の魔法槍の青年が語った
血気盛んな弓兵が続く
「そんな歴史には終止符を打ってやるために俺たちはわざわざここまで来たんだ」
勇者は何も言わず黙って呪われた鎧を眺めていた
「・・・」
「別に信じなくても構わないこちらで勝手に協力させてもらう」
松明をもって洞窟の奥へと誘う呪われた鎧
「ついてこいお前らに白夜の宝杖のありかを教えよう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます