コットンキャンディー

「あ、神田くん…?今大丈夫だった…?」


数十分悩んだ末にやっとかけることができた電話

こんなに緊張するものだったかな…


「好きな物…?」

「そう!何だかんだ関わるようになったけど私何も神田くんのこと知らないなぁって思って…」


突然の立花さんからの電話に手が震える

俺の事を知ろうとしてくれている事に少しだけ嬉しくなってしまう

君のそういうところに俺は惹かれたんだよ

なんて言葉を飲み込んで話を続けた


「んー…半分ぐらい母さんの影響だけど甘い物とかは好きだよ」

「甘いもの…!私も好きだなぁ……他って何かある?」

「立花さんも好きなんだね…他かぁ……猫…?」

「猫…?」

「幼い頃に飼ってたんだ」

「そっか〜…猫可愛いよね…私の癒し……あ!好きな色とかも知りたい」

「無難に黒とかグレーとか好きだよ」

「分かった!ありがとう神田くん!」


会話の終わりが見えてきた

もう少しだけ話していたい


「あ、ねえ…立花さん」

「ん?」

「今度ケーキバイキング行かない…?俺一人じゃ少し恥ずかしくて…」

「行きたい!…でも、私でいいの?」

「うん。立花さんだから」

「うん…嬉しい」


さりげなく、誘えたはず

立花さんの好きな人はいないって噂だけど確率的に俺を好きになる事も無さそう

だからこそ、この思いを知られてしまえば二度と話せなくなるかもしれない

それは少しだけ寂しく思う

ちゃんと俺が君を諦められるまで君は少しでも俺にその笑顔を向けていて欲しいな


「神田くん、ありがとうね!」


よし!プレゼント探しに行きますか!

神田くんのことを少しだけ知ることが出来たような気がして上機嫌の私はこの後、大きな問題が起きることなんて分かるはずもなかった








「お願い、……もうやめて」


こぼれ落ちた涙と血液

孤独と恐怖を覚えた幼少期

目の前で起こる光景は と言っていい気がした

溶けて消えた綿飴を造り直すはできるのだろうか

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