第35話 魔石に魔法陣を込めましょう
「マリア、魔術杖は持ってきたか?」
「はい! 持ってきました」
今日から核魔石の作り方を教えてもらうのだ。
「よし、まず紙に条件づけの魔法陣を構築だ。そうだな、取りあえず、簡単に『形を30分持続』と条件づけしてくれ」
「はい、わかりました」
ガイモンさんにそう答えると早速、紙に魔法陣を書いた。
「いいか、魔術杖で空気中の魔因子を引き寄せ、紙に書いた魔法陣を空中に再現するんだ」
この魔術杖の元は魔素の大樹。
魔素の大樹とは空気中に漂っている
私達が日頃使う魔法は空気中の
その魔因子の調和をしてくれるのが魔素の大樹と言うわけだ。
魔素の大樹で作られた魔術杖は空気中の
引き寄せた魔因子で空中に魔法陣を構築しそれを魔石に流し込めば核魔石の出来上がりだ。
この日から魔術杖を使って空中で魔法陣を構築する練習が始まり、何度も失敗と成功を繰り返し3日かかってようやく空中で安定した魔法陣を構築する事ができ、それを魔石に上手く流し込む事が出来るようになった。
そしていよいよ今日、
「俺は現代文字で核魔石を作ることは出来ても
そうか、ガイモンさんはメアリーちゃんの事故の後、進学を諦めて学園を後にしたんだったな。
でも、今のガイモンさんなら
これは、あの赤の賢者監修の
きっと、赤の賢者は心の優しい人だったに違いない。
それに
文字自体に魔力があるのだ、そんな文字を使って呪いの言葉をノートにでも書き込んだらそれこそ『デ〇ノート』のような事になりかねない。
だから、人を恨む心を持たない人、他人を幸せにしてあげたいという気持ちのある人が
まあ、これは私のたんなる推測なんだけどね。
「ガイモンさん、今度は私が
私がそう言うとガイモンさんが優しく笑った。
それからはレオン君の義手とメアリーちゃんの義足に埋め込む核魔石の条件を洗い出し。
ガイモンさんと二人であらゆる人間の手、足の動きを考え、魔法陣を構築していく。
人間の骨や関節などの構造は私の知識をフル活用、ガイモンさんは私の気が回らない生活上の注意点などを指摘。
その結果、動きはもちろん、体温、感覚、怪我に対する反応、ありとあらゆる条件が出された。
そんなこんなで紙上に描かれた魔法陣は一メートル四方にもなった。
それが二人分だ。
「これはすごいな。これを空中に再現するのは半日はかかるな」
た、確かに…
これは一日も早くガイモンさんに
今後の事業に関わる問題だ。
こうなったらガイモンさんは
トイレとお風呂ぐらいは許そう。
密かにガイモンさん監禁計画を練っている私の顔を見てガイモンさんが口を開いた。
「マリア、今すっごい極悪非道な顔してるぞ。なにかよからぬことを考えてるだろう?」
「な、なに言ってるんですか。どうやったら効率よくガイモンさんに
嘘ではない。
その方法に監禁という手段を考えていることは内緒にしておこう。
そうだ、逃げられないように足枷の購入も検討しておこう。
「さあ、頑張って
「えっ、おい! まさか今からやるのか?」
「当たり前じゃないですか。私がレオンさんの義手とメアリーさんの義足の核魔石を作ったら今挿入している核魔石と入れ替え作業をしますよ。今日は徹夜ですからね?」
「うっ、わかった。じゃあ、今からレオンとメアリーの義肢を預かっておくか。後は夕食と夜食の手配だな」
そうして私達は義肢のゴーレム化作業に没頭した。
途中、学園から帰ってきたアンドレお兄様がナタリーと一緒に夕食を運んで来てくれたり、ルー先生とランさんが夜食を持ってきてくれたりとかなり賑やかな徹夜作業となった。
レオン君とメアリーちゃんも工房で私達の作業を見守っていた。
まずはレオン君用に用意された魔法陣を空中に再現する。
魔術杖で引き寄せた魔因子で
文字自体に魔力があると言うだけあって私が握っている魔術杖から紡ぎ出される文字は虹色に光、意味を持った単語ごとに整列し魔法陣に収まっていく。
紙に書き出した魔法陣を忠実に空中に再現するのは骨の折れる作業だ。
しかも大きさが半端ない。
レオン君の義手は核魔石の他にクズ魔石に簡単な条件づけの魔法陣を組み込んだ関節用も用意。
人間の手の複雑な骨格の仕組みに見合うように動きに制限が出ないように緻密に考慮された義手を目指したのだ。
メアリーちゃんの義足はまず上体を支えるように強靭な仕上がり、まだ成長期なのを考慮して反対側の足と同じ様に義足も成長するように条件づけした。
こうしてレオン君とメアリーちゃんの義肢の核魔石が完成。
「ガイモンさん、後は核魔石の入れ替え作業ですね」
「ああ、任せろ。マリアは休んでいて良いぞ」
「いえ、レオンさんの義手にはめ込む関節用のクズ魔石は、はめ込む場所が決まってますので私がその都度指示します」
「わかった。それじゃあ、始めるか」
そして夜が明け始める頃、ようやく、レオン君とメアリーちゃんの義肢が完成した。
「で、出来た!」
「ああ、完成したな!」
思わずガイモンさんとハイタッチで歓声をあげると、今まで作業を見守っていたルー先生が人差し指を唇に当てて「しー」と言った。
ルー先生の視線の先を見ると、工房の片隅に設けた休憩場所兼お客さん用の応接エリアにアンドレお兄様、レオン君、メアリーちゃんの三人が思い思いの格好で寝ていた。
「あは、みんな帰らないでここに居たんですね。ルー先生もずっと?」
「まあね。一応、あたしはマリア様の護衛だもの。それにしても
んな、オーバーな。
「ああ、あれはすごかったな。
ふふふ、もうすぐガイモンさんもその仲間入りですよ。
複製のスキルを生かした錬金術に
あれ? そうしたら私いらなくない?
やばい、共同経営者の地位が揺らいでいるじゃないか!
スキルを、複製のスキルを手に入れなくては!
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