第33話 お買い物に行きましょう②
さて、目的の杖も購入。
可愛い物がいっぱいの店内で買いものを満喫し、ブラブラと王都の街を散策した。
王都の外れから引っ越してきたメアリーちゃんと王都の屋敷に居ながらほとんど外に出たことのない私。
おのぼりさん状態になるのは仕方ない。
メアリーちゃんと手をつないでキャッキャとはしゃぎながら歩く私達のすぐ後ろをガイモンさんとルー先生が並んで歩く。
買った商品はアンドレお兄様から貰ったマジックバックに収納した。
ふふふ、実は先ほどのお店でメアリーちゃんに似合いそうな髪飾りを見つけたのでこっそりと買ったのだ。
プレゼントするのが楽しみだ。
喜んでくれると良いな。
もちろん、これからお世話になるガイモンさんと今現在お世話になっているルー先生にもちょっとしたプレゼントを用意。
今日はお金の払い方と王都の物価も勉強出来て良かった。
実体験は想像するより楽しいものだ。
行き交う人々の視線が痛いが楽しいので気にしなーい。
果物屋さんで謎のフルーツを試食したり、怪しげな石を売りつけられそうになったりとワイワイと過ごした。
ちょうどお昼になったのでルー先生おすすめのお店でランチタイム。
オシャレなカフェ風の店内はお昼時と言うこともあり混雑していた。
待つこと20分、ようやく私達の番が来て4人掛けの席に案内された。
私とルー先生が並んで座り、その前にメアリーちゃんとガイモンさんが座る。
この世界で初めての外食です。
ワクワクしながらメニューを開く。
…ダメだこりゃ
メニューを見たけど、どんな料理かまったく不明。
それを思うと日本のファミレスは親切だよね。
写真つきな上にカロリーまで表示されていたものね。
私が一人難しい顔でメニューを睨んでいる間に皆さん決まったようだ。
「マリアはまだ決まらないのか?」
「えっと、ガイモンさんは何にしたんですか?」
「俺はガガレムのステーキ・レミナソースがけにヌーメのスープセットにした」
ガガレム? ヌーメ? 何だろう?
「メアリーさんは?」
「私はビガンゼのシシカブブ煮込みとパンのセットです」
ビガンゼ? シシカブブ?
「えっと、ルー先生は?」
「そうねぇ、あたしは朝食べ過ぎたからお昼は軽くズイドンとオモオモのサンドイッチにするわ」
ズイドン? オモオモ? 全然軽く聞こえないネーミングなんですけど?
うーむ。
そっと隣のテーブルを伺うとクリームシチューっぽいものとロールパンを食べている男の子がいた。
あれだ! 安定のレギュラーメニューではありませんか。
「私、あれにします」
と言って隣のテーブルを指さすとメアリーちゃんが嬉しそうに手を叩いた。
「私と一緒ですね。マリア様もビガンゼが好きなんて嬉しいです」
あはは…ビガンゼって何やねん?
おーうまうま。
料理が来てお食事中。
なんだ、ビガンゼってチキンのことじゃん。
ってことはシシカブブは牛乳とかホワイトソースってとこだな。
こんな感じのリシャール邸でも食べたことあるぞ。
「しかし、メアリーは小さい頃からビガンゼの肉が好きだよな。父さんが魔物討伐に行くって言うと必ずビガンゼを仕留めてきてってねだってたもんな」
へ? い、今なんと?
「え~ ガイ兄さんだってガガレムを取ってきてくれって自分で罠まで作ってお父さんに渡していたじゃない。ガガレムは群で生活するから生け捕りにするには大変なのよ。そのわりに魔石が小粒なんだから」
魔物討伐?
ビガンゼ、魔物なんか?!
こりゃあ、ガガレムもズイドンもオモオモも魔物で決まりだね。
日本のお母さん~ あなたの娘は異世界で魔物食べて逞しく生きてますよ!
「あら、マリア様ったら泣くほど美味しいの?」
はい、美味しいです。
もう何が食卓に出てきてもバッチ来いですよ。
みんな食べ終わって食後のティータイム。
何だかメアリーちゃんがそわそわしている。
「あ、あの… 私、先ほどのお店でマリア様に似合う髪飾りを見つけたんです。伯爵家の令嬢であるマリア様はもっと高価な物をたくさんお持ちかとは思うんですけど、もらっていただけると嬉しいです」
「ええっ、本当ですか? 嬉しいです! 実は私もメアリーさんに似合いそうな髪飾りを買ったんです」
そう言ってお互いの包みを交換して中を見た。
「「あ! 一緒!」」
なんと色違いの花をモチーフにした髪飾りだった。
早速、髪飾りを付けて見た。
そしてお互いに目を合わせると笑いあった。
そんなメアリーちゃんを隣で優しい目で見つめるガイモンさん。ああ、良いお兄ちゃんだな。
ご両親が亡くなった後は、兄というよりも父親のようにメアリーちゃんを守って来たんだろうね。
あ、そうだ。
「ガイモンさん、ガイモンさんにもプレゼントです。はいこれ」と、言って渡したのは先程購入した魔術杖。
「こ、これは…」
ふふふ…
弟子からのプレゼントに感動で言葉もないようですね、ガイモンさん。
「おまけ?」
「な、何言ってるんですか? そんなわけ無いじゃないですか。イヤだなあもう。尊敬する師匠におまけの杖なんかプレゼントするわけないですよ。ちゃんとガイモンさんのネーム入りですよ?」
「ああ、しっかりと俺の名前がはいってるなあ」
そうだろう、そうだろう。
私の杖と色も形も同じなんだもん。
間違えるとイヤなので親父さんにそれぞれの名前を入れてもらったのだ。
私の杖にはピンクで『マリアーナ』、おまけの方には茶色で『ガイモン』って入れてくれと親父さんに言ったのだ。
「『おまけのガイモン』ってな」
ええっー! 何ですと?!
確かめるべくガイモンさんの手から杖をひったくり問題の箇所を見る。
ほ、ほんとだ…
『おまけのガイモン』って書いてある。
あのオヤジ、私の言ったことまんま書きやがったな!
しかも微妙にニュアンスが違うじゃないか!
おまけのガイモン杖を握りしめ固まっていると、突然メアリーちゃんとルー先生が盛大に吹き出した。
「もう! あんた達ってば面白すぎるわね」
「お、おまけのガイモン? フフフ、可笑しくて笑いが止まりません。こんなに笑ったのは久しぶりです」
た、楽しんでいただけて何よりです…
そっとガイモンさんの様子を伺うと、苦笑いをしながらこちらに手を伸ばした。
「まあ、くれるというのならありがたく貰っておく。ありがとな」と、言って受け取ってくれた。
良かった。
怒ってはいないようだ。
ルー先生の笑いが収まった後、そう言えばルー先生にもプレゼントを買ったことを思い出した。
「ルー先生、ルー先生にもプレゼントがあるんです。いつもお世話になっているので」そう言って取り出したのは両手サイズの黒猫の縫いぐるみ。
まん丸のエメラルドグリーンの瞳は恋愛成就の御守りになっている優れものだ。
ちなみに私は白猫の縫いぐるみをチョイス。
黒曜石のような黒い瞳に懐かしさを感じ思わず買ってしまった。
「まあ! 可愛いわね。 嬉しいわ、ありがとうマリア様。大事にするわね」
綺麗な笑顔を私に向けるルー先生を見ながらガイモンさんが呟いた。
「うーん。成人男性にあれは…」
良いんです。
ルー先生は私の護衛と言うこともあり、使用人棟ではなく本邸の側近部屋で生活している。
シュガーも良く懐いていて時折、部屋におじゃましているようだった。
たまたまシュガーを探しているときに通りがかったルー先生の部屋。
少しだけドアが開いていたので好奇心で覗いてしまったのだ。
そこには可愛いものであふれていた。
ああ、ルー先生を見て妹の美月を思い出すのは、こういうことかと妙に納得した。
可愛いものを集めるのが趣味だった私達姉妹。
感性の波長がドンピシャだったからだと。
「あ! これ見て下さい。シュガーの首輪です。綺麗な青色でしょう? あ、ブラシも買ったんです。可愛いでしょ?」
「ねえ、マリア様、旦那様とアンドレ様には何買ったの?」
あっ!
こりゃまずい…
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