第3話 素晴らしい法律

「車でも5、6年乗れば乗り換えの時期がきます。新しい車に乗り換え、今まで乗っていた車はそれを必要とする人に渡されます。こうやって『パートナー』を変える事は双方にとってメリットがあることなんです」


 政府関係者がテレビでこんなことを言っていた。

 

 日本の離婚率増加が止まらない。

 平成の終盤ですでに30%以上あった日本の離婚率は、次の年号の令和が終わりかけている現代に至るまで、なおも増大を続けている。

 そしてこの「後味の悪い」離婚は日本経済に大きなダメージを与え続けている。


 そこで政府は重い腰を上げた。

 すでにアメリカで取り入れられていた「パートナー交換制度」の導入だ。

 それは一定の年数でそれまで結婚していたパートナーを一旦強制的に解消するというもので、お互い新しい船出を強制的にさせられるのだ。


 夫婦生活なんてお互い不満がつきもの。

 これが一旦解消されることにより、気づかなかったお互いの大切さがわかるようになる。こうして新たに見つけたパートナーは「トキメキ」や「ビビリ」ではなく、ちゃんと将来を見据えた上で選ぶこととなり、二人は幸せな人生を送ることができる、というものだ。


 最初は抵抗があったようだが、意外とメリットもあった。

 若い段階で運命の相手を掴み損ねた人も、シャッフルの後フリーになるため、そこでおこぼれを頂戴するチャンスが生まれるのだ。


 しかしそれは現状に不満を持った人の話。

 私たちのようにお互い必要とし合って、愛し合った二人が離婚するメリットなんてほとんどない、いやゼロだ。

 この人権侵害甚だしい法律のために、私と美沙恵の明るい未来は打ち砕かれるというのか。


 私はこの法律と戦うことにした。

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