第2話 運命の人って本当にいるんだ
私は美沙恵を愛している。
出会いは大学のテニスサークルだった。
最初はお互いを異性として意識することはなく、仲の良い友人として過ごした。5度目の春に、そのまま私たちは卒業を迎えた。
再開したのは卒後1年ほど経ったある日のこと。偶然道端で出会い、お互いの社会人としての苦労話などを交わすうちに、いつのまにか意気投合。気づけば付き合い始め、そのまま結婚することになった。
思い返せばあれがいけなかった。
あそこで美沙恵と出会っていなければ、こんなことにはならなかったのに。
美沙恵は才色兼備を絵に描いたような女性だった。
家事は完璧にこなし、私がコーヒーを飲みたくなるタイミングでもうすでに淹れ始めている。その日の疲れ具合に合わせて温度や濃さ、使う豆も調整し、それも絶妙な調整具合で私の心にフィットする。
私が何かを言おうと思った時にはもう既に事が済んでいて、私が手を施すことはほとんどない。
本当に私にはもったいないくらいの女性だ。
私も世界一とまではいかないが、美沙恵という存在に精一杯、感謝の意を忘れない。
毎日抱きしめ「愛しているよ」と耳元で囁く。その度に美沙恵は嬉しそうに微笑む。
運命の人。
辞書でその言葉を引けばきっと私たちの名前が出てくるだろう、と本気で私は考えている。
このまま二人で年をとって、子どもが生まれて、いずれ引退したらのんびりと世界一周でもする。そんな人生が送れたら、私はもう何も他に願うことはない、常々そう思っていた。
それがあんなもののために壊されるなんて。
本当に許せない、だれがあんな法律を作ったんだろうか。
私はこの時代に生まれてきたことを恨んだ。
数年前に制定された法律、
「明るい」パートナー交換制度
によって、強制的に離婚させられるなんて。
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