DAY4 海

 驚いた、もしくは驚愕した。

 僕の脳内国語辞典には今の感情をこれ以上正確に表せる言葉は存在しなかった。何というボキャブラリーの無さ。嗚呼、虚しい。

「たしかに、それは悲しいね。でも、この状況で思考ができることが凄いんじゃないかな?」

 彼はその後にこう続けた。

「そんなことより今の状況を整理しておこう。僕も参加者に選ばれたようでね。突然目視したものを凍らせる能力を得たみたいなんだ。そしてあいつに追われているってわけだ。僕とあいつじゃあ能力の相性が悪いんだよ。凍らせてもすぐ溶けてしまうからね」

 そういうわけで僕たちは走って逃げている、ということらしい。確かに炎塊は僕たちの方に向かってくる。というかさっきの彼の発言、“僕も”ってことは僕も参加者なのか?

「とにかく、現状をどう打破するか? というとこだよ。どうしたらあいつに勝てると思う?」

 僕は走りながら考える。

 炎、火、火を消す、水、大量の水、海。

「近くに海があっただろう? あいつを凍らせて、砕いて、海に投げ込むのっていうのはどうだ?」

「じゃあ、とりあえず海の方へ行こうか。それで、気になっていたんだがその剣はなんだい?」

 僕自身よく分かっていないのでどう説明したものかと思う僕はこう言った。

「まだ言ってなったか? 彼女の所にあったんだ。身を守ることぐらいは出来るんだろうよ」

 その間もずっと走っていたので息が切れた。そうこうしているうちに海にはついた。

「海についたね。じゃあ、僕は奴を凍らせるからその剣で砕いてくれ」

 剣で砕くというのはどうなのかと思うが、手近に良いものがないのでそうするしかないだろう。

「分かった」

 言うまでもなく、炎塊は僕達を追いかけて来ていた。

 僕は手筈通りに、凍った炎塊を剣で砕こうとした。剣なので砕くというより切るように剣を振るった。

 案の定、凍った炎塊は砕けなかった。

 砕けなかった代わりに、剣で切った部分から真っ赤な血が吹き出した。

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