DAY3 炎と氷

 どうしようもないままに町をぶらついていると不思議探しのときにお世話になった彼に出会った。

「やあ、久しぶり。不思議電話のとき以来かな?」

 気が動転していた僕は、彼を連れて適当な店に入りあろうことか今の状況を、僕の知る限りのことを全て話していたのだ! 信じてもらえるわけもないのに。

「それは興味深い話を聞いたよ。信じる信じないは置いておいて、君は参加者になったのかい?」

「分からない。彼女のあの言い方だと巻き込まれる可能性もあるようだが……」

「それなら僕が守ってあげないとね?」

 彼は笑ってそう言った。



 その後も今までのことやこれからどうするべきかなどを話していた僕と彼。

 それは突然だった。

 少し離れたところで数メートルの火柱が上がった。

 ものすごい明るさだ。それに加えてここもかなり熱い。“暑い”ではなく“熱い”。熱風が想像だにしないほどだ。

「あれ? 火事かな?」

 何を言っているのだろう? 彼はずれているところがあるみたいだ。あれが単なる火事のレベルならこの世界はとっくに滅んでいるだろう。放火って感じでもない。というか、これを火事と思うのはずれているとかそういう次元なのだろうか? それはそうとこの現象は僕の知っているものではないようだ。なぜならさっきの火柱は、だんだんゆっくり、けれど確かに変形して人型に成ったのだ! 炎人と成ったのだ。突然出てくるなら猿人の方が良かったな! 次の日は新聞がよく売れることだろう。

「やっぱり君は面白いね」

「面白がってる場合か? とにかく、逃げるぞ!」

 今日はやたらエクスクラメンションマークを使う日だなぁ。

 そんな僕のことは気遣いもせず炎塊えんかいは少しづつ、しかし確実にこちらに近づいていた。

「逃げるには時間が必要だよね?」

 彼は、逃げようとせず炎塊の方に向き直り右手を顔の高さのところまで上げ、指を鳴らした。

 途端、炎塊の動きは止まった。

 炎塊が、巨大な炎が凍った? のだ。凍った?

「それじゃあ、逃げようか?」

 もう、訳が分からない。

 キャパオーバーにもほどがある。とにかく今は逃げることに専念した。

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