DAY10&DAY2=DAY1 神座
「君に妹さんがいたなんて、知らなかったよ。」
僕が彼女のところに少女ちゃんを連れて行ったとき、彼女が一番はじめに言った言葉だった。彼女は軽く笑っていた。まるで彼女は僕の帰りを待っていたように裏口の扉を開けたところから嫌でも見える位置に座っていた。こっちを向いて。
「僕が一人っ子ってことは知ってるだろう?」
それより、と僕は言葉の間に挟んで、
「この子、記憶喪失みたいなんだ。」
と言った。彼女ならなんとかできるのではないかという根拠のない希望を含めて。
しかし、
「それで? 僕にどうして欲しいんだい?」
彼女は、僕との身長差の関係で下から見下ろすという器用なことをしながら、睨むような、威圧するような、そして、面倒臭そうに、そう言った。
僕はあっけにとられて口ごもりながら、
「いや、お前はいろんなことを知っているし、何か手助けが出来るんじゃないかと思って……」
「僕のことをなんでもするお人好しだと思っちゃいけないよ? 僕がいろいろしてあげるのは君と僕の仲だからだよ。分かってるんだろう? まあ良いや。今回は協力してあげるよ。それで、お嬢さん、何か覚えていることはあるかい?」
彼女は僕がすでに少女ちゃんを連れてきているから仕方がないと思ったんだろう。追い返すのをかわいそうと考えるあたりが……
「戦い……それと、神聖の域を見ました。」
この言葉で彼女の少女ちゃんをみる目が変わったように見えた。しかし、少女ちゃんは何を言っているのだろう?戦いはまだわかる。シンセイノイキ?
「それは、“神の選抜”、だね。」
彼女は続けて
「とうとう始まってしまったか。」
と言ったように聞こえたのだが、少女ちゃんはなんの反応もしないし僕の聞き間違いかもしれない。しかし、その前に気になることがある。
「なんだ?その……“神の選抜”? っていうのは」
「昔、聞いたことがあってね。」
「昔ってお前、何歳だよ?」
「十年一昔っていうだろう? “神の選抜”というのは神の世代交代の儀式みたいなものさ。参加したもので殺し合いをし、最後の一人になるか、神を殺したものが神となる。そういう儀式のことさ。」
神は純血のみかと思ってた、という僕のぼやきに答える声はそこには無かった。
「あの、『私』は、『わたし』は一体なんなのでしょう?」
少女ちゃんのその問い彼女(僕の幼馴染の方)は、
「それは今は分からない。僕なりに調べてみるよ。それと、僕からも質問だ。
また分からない単語が出てきたぞ。シンザ? この2人にはわかる、僕にとっては未知の単語だ。
「覚えていません。少なくとも私の見たとき神聖の域には誰もいませんでした。」
その日、彼女の顔が晴れることは無かった。
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