DAY7 練習

「何をどうしたって僕には勝てないんだよ!」

 僕は今日、今までにこの台詞を何回聞き、今後何回聞くことになるのか、両者ともに見当がつかなかった。

「君の負けは確定だよ!」

 本日36回目の負けである。


 今日は彼女の持ち物の中で一番大きいテレビのある部屋でゲームをしているのである。暇つぶしというわけではない、と言いたいが本当に暇つぶしなのでなんとも言えない。彼女はスマホならまだしもテレビと接続するようなゲームはしない。なのになぜかゲーム機からカセットがしまってあったのだ。それも有名どころからかなりマニアックなものまで。未開拓の部屋を片付けていたらそんな部屋が見つかったのだ。コレクション部屋だろうか? そもそもここには幾つの部屋があるのだろうか? ガレージの外見からは想像もできないほどというか、確実に部屋の容積の方が多いだろう。また彼女への謎が深まってしまった。


 そんなこんなでゲームを始めてから僕は、一度も彼女に勝つことが出来なかった。負け続けである。僕の知らないところでこのゲームをしていた? 確かに彼女は根っからのインドア派だ。だが、ゲームをするよりは本を読んでいるような、そのときが楽しいことよりも、先のため後のために知識をつけておくタイプだと思っていた。それにこのゲームがあったのは今日開拓した部屋なのだ。

 そうなると僕の疑問は一つ。


「なんでそんなに強いんだよ?」


「まるで僕が弱くて当然みたいな言い方じゃないか。全く心外でもなんでもないよ。」

「心外でもなんでもないのかよ。」

「なんでもないよ。僕が弱いだろうと思われている理由はなんとなくわかるしね。僕は、勝つことにこだわりは無いけれど、負けるのは嫌いなんだ。」

 それは……ただの負けず嫌いなのではないだろうか?

「そうかもしれないね。とにかく、僕はそれが何であっても、一度でも負けたらもう二度と負けないようにしたい。だから可能な限り練習するのさ。」

 僕はこの言葉に少なからず驚いた。このゲームで(このゲームのみとは限らないが)彼女が負けるようなことはありえないだろうと思っていたからだ。彼女は何もしないがなんでもできそうな雰囲気というかオーラというか、なんだかそんなようなものがある気がするのだ。何故だろうか? 本当に自分からは何もしないのに。手伝ってはくれるが。

「ということは、このゲームでも負けたことがあるっていうことなのか?」

「あるよ。」

 彼女はさらりと、

「君にね。」

 そう言った。

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