DAY8 神
僕と彼女は本棚の整理していた。未開拓の部屋、というほどでもなかったが、彼女ですら本を取りにくるくらいにしか出入りのない部屋だったので埃がすごかった。窓を開け空気を入れ替え、掃除機をかけた。床は一番最後に掃除するのが一番なのだ。しかし今回の場合、まず初めに床を掃除しなければならない状況だった。あとは察してくれ。床の掃除機がけが終わり、本を一旦全部ビニールシートを敷いた床の上に出してから本棚を拭こうとしていたときだった。
「君は神を信じるかい?」
彼女はまた、突然に僕にそう問うのだった。
「残念ながら神を見たわけじゃないし、信じてはいないな。」
「君は神というものを絶対的な力でも持った何か、だと勘違いしているんじゃないのかい?」
彼女は少し驚いたように(外見にも声にも変化はないが)して僕にそう言った。
「違うのか?」
実際のところ僕はそう思っていたし、それは僕だけではないだろう。
「違うとも。例えば、ここに一冊の本があるだろう? フィクションだ。そして君がこの本の住人だったとしよう。よく考えてごらん?」
僕は何を考えればいいのかわからぬまま、考えて、と言われたので考えたふりをする。そういう過程を経て出した回答はこうだった。
「何を?」
彼女は軽く笑いながら、
「君は僕の言ったことについてではなく僕の言ったことの意味について考えていたのかいい? まあいいさ。僕の説明不足なところもあるだろうからね。」
さらに続けて、
「つまりはこういうことさ。君が住んでいるこの本を作った人物、それは絶対的な力なんて持っていない、簡単に言うとただの人間だが君の住む世界を作ったんだ。それはその世界の住人たちにとっては“神”同等なんじゃないかな?」
と言った。
ああ、なるほど。
「見方によって考え方が変わると。」
「そう。そして、そういう見方ができる以上、神は必ずしも絶対的な力を持っているとは限らないということだ。さらに、この地球上にいて、特別な何かがなくても見ることができるものっていうことになるのさ。」
今日この時、僕の“神”への勝手で一方的な固定概念が崩壊したのであった。
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