DAY9 時

「時というのは残酷だとは思わないかい?」

「急になんの話だ?」

 彼女は唐突に話し出すので今回の話にもなんの脈絡もない。それに加えて、僕は物分かりのいい方じゃない。そうくればこのように返答するしかないのだ。

「“時”の話さ。時というのはいついかなるときでも同じ速さで、同じほどしか進まないじゃないか」

 彼女の説明を受けて、それでも彼女の言いたいことが分からないのは、やはり僕の物分かりが悪いからなのだろうか?

「それは、そう決められてものだからじゃないのか?」

「違う違う。それは“時間”だ。そんな人間の勝手に決めたモノの話をしているんじゃないんだ。“時”だよ。自然の摂理さ」

“時”と“時間”の違いがいまいち分からないまま僕は、

「それで? 時は残酷っていう話だったな。お前の言うとおり“自然の摂理”なんだからしょうがないだろ?」

 と言った。そう言うしかなかった、の方が正しいのかもしれないが。

「全くもってどうしようもない訳でもないんだ。例えば光より速く動けば時を超えられると言う」

 確かに、そうすれば時というものを超越できるのかもしれないが、それこそ全くもってどうしようもないものなのではないだろうか。

「他にも何かあるのか?」

 どうせcan’t、つまりできないのだろうが。

「そうだね…… ブラックホールの中時が止まっているらしい。←この句読点のようにね」

 ブラックホールのような、光も曲げてしまうような引力のところに行ってしまえば、体が原子分裂してしまうのではないだろうか? いや、この場合は分子分裂の方が正しいのだろうか? ううむ……分からない。

「どの道、無理な話だな」

「そうだね。今のところは、だけどね」

 彼女は意味ありげにそういうのだった。

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