第5話 荒廃

要は恐る恐るサイコロを振った。賽ノ目は{6.4.2}

[天界の下より6層が悪魔の縄張りに決まりました、13層および12層は自動的に

トリニティエンジェルにより保護されます、それ以外は予測不可能です]いよいよ

縄張り争いにでも始まるかと思っていれば、世界は意外と平和だった。

「意外だな」

「モニターオン第六層」

アンジュが言うとモニターが切り替わり、残虐行為が蔓延る荒廃した世界が映し出された。

「今あなたがしているのは天界の再創造、あなたが現実と考えていた場所はその派生、つまりシミュレーターね」

「シミュレーション仮説とか結構的を射た仮説だったんだな」

「天界の善と悪の比率がシミュレーターに大きく作用するの、天界の13層、12層からの転生者は、記憶を持ったまま、生前のスキルも持ち越して転生できるけどそれ以外は、大抵記憶を失いスキルも生まれながらにはとはいかないの」

要は、言われるがままサイコロを振る役目に徹していたが、ふと

「なぜ、僕が執行者に選ばれたんだい?」

とアンジュに聞いた。するとアンジュは、

「それはあなたが創造主の領域テリトリーに飛んでいった最初の人物だからよ」

「そんな覚えはないんだけどな…」

「潜在意識の中で不可侵の領域に飛び込む異端者イレギュラー後にも先にもあなただけがそれをなした、それを創造主様はそれをお認めになられ再創造をあなたに託したというわけ」

「そうだ、僕の肉体はどうなったんだ?」

「あなたは死にました、肉体はね。ここは、天界の13層のユグドラシルランドの世界樹の天辺にある創造の間」

「そうか死んだのか、ふふっ、つまらない人生だったな」

「そうでもないわよ、あなたは異端者イレギュラーになった、それこそ創造主の真の望み」

要は少しだけしんみりした。感情というものが薄れてきているのか心は平穏だった。

何かすべてに守られているかのような安心感があった。

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