第2話 双六

 要は少しばかり強張った表情でアンジュに問う。

「ところで僕はなんでこんな世界にやってきてしまったんだい?」

アンジュは急に真剣な表情になり、凄味のある声で言った。

「あなたはねぇ、選ばれたのよ!再創生の儀の執行者に」

「しっ執行者!?」

執行者という響きに気がとられてしまって肝心の再創生というところに触れられない要だったが、そこはかとなくアンジュが、

「再創生の…ね!」

と付け足してくれた。要は目が点になった。生まれてこの方ないほどの衝撃を受けた。にも拘らず何かワクワクしている自分がいるのがわかる。今まで選ばれることなどない人生を歩んできた。そんな要からしたら、嬉しい、この上なく嬉しい話だった。

「それで、僕は一体どうすればいいんだ?再創生なんてモチのロンでやったことなんてないぞ」

「大丈夫、すごろくって知っているでしょう?基本それで決まるから」

「はっ?」

要は呆気にとられた。それはそうだ、世界再創生なんて大それたことをすごろくで決めるだなんて馬鹿げている。第一システムはどうなっているのか。まさかマス目に止まって人類が誕生したとか、滅びたとかそんな決め方なのか?そんなことを考えていると、

「ストップ、大丈夫なるようになるから」

とアンジュは言う。しかし、何も知らないものからしたらはっきり言って怖い。恐怖である。

「辞退はできないのかな?」

恐る恐る要が聞くと、アンジュはキリッととした口調で、

「男なら当たって砕けろ!すごろくだけに、ふふふっ」

とあまり笑えないジョークともとれないことを言って笑った。

しかし、その意味を知りひっくり返る想いをするとはこの時の要は思っても

みなかったのである。

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