世界創生が双六だった件

魯沙土曜

第1話 死んでるような生きてるような

 彼は死んでいるのか?いや確かに触ればピクリと反応するし生きているのは生きている。しかしながら、話しかけてもなにも反応がない。それは死んでいるようで生きている、生きる屍と見るに等しい。彼の名は、真帆李要。10代の頃から統合失調症を患っており、今は20代後半だ。しかし、なぜ彼はこの様な昏睡状態に陥ったのか。理由は注射と薬の副作用の相性が悪すぎたからだろう。



________。

「ハロワ!」

どこからともなく声が聞こえてくる。

「ハロワ!」

適当に返してみた。すると脳に直接声が入ってくるようになった。

(なんだこれ変な感じだなあ)

「あらやっぱり変に感じる?」

「うわっ!?」

ディズニー映画にでてきそうな妖精のようないでたちをした、恐らく妖精さんが、要が驚く様子をみてクスクス笑っているのがわかる。世界はまるで水槽のようですべてがぷかぷか浮かんでいるかのようだ。妖精さんは暫く笑った後、自己紹介を始めた。

「私はこの世界の道先案内人、貴方の旅のコンシェルジュ」

「はあ」

要の力ない応答に妖精さんは少し残念そうな表情で、

「私じゃ嫌?」

と聞いてきた。何かその表情と仕草に可愛らしさを感じた要は、

「嫌じゃないさ、ただここどこ?君の名前は?」

と真っ当な質問をした。妖精さんはハッとした表情になり、何やらもじもじしている。

(はーん、さては名前が結構なセンスをしていて言うのが恥ずかしいのか)

「ちがうもん!」

「うわっ!」

これで二度目であるが、思ったことはすべて筒抜けらしい。所謂テレパシーというやつか。

「この世界では常時、精神がリンクされているからね、貴方のようなお上りさんは思ったことそのまま発しちゃうから手間取るわ~」

「そんなこと言われてもしょうがないじゃあないか」

これも心で思ったことだ。突発的に発してしまっていた。要はなんだか少し恥ずかしくなってきた。そんなことはお構いなしに妖精さんは続けた。

「私の名前はアンジュ、そしてこの世界は世界創生の地ユグドラシルランド」

「質問に答えてくれてありがとうアンジュ、俺は真帆李要、要でいいよ」

「あら意外と素直ねえ、よかったわ、助かる」

なにが助かるのかは、よく分からなかったが分かったことが一つだけある。

(なんかすごい世界きちまったーーー。)ということである。

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