第15話 休みの前に
毎日走り込みやシールド練習を繰り返し、ゴールデンウィークが近づいていた。
周りは早くも浮かれていて、どこへ行くか、アルバイトのことなどでクラスは賑わっていた。
光も浮かれていないといえば嘘になる。学校が休みになるということで自由な時間が増える。出かけて襲われるのも嫌なので、家でだらけていたかった。
しかしその願望はすぐに、叶わないことだとわかることになる。
「光君、最近国の様子がおかしいのです。以前設置した目安箱覚えてますか?あれを確認したら、変なことが書いてあって……」
夜、部屋でアルベールがアプリから国の様子を確認する。
目安箱に入っていた内容をアルベールが読み上げた。
「『前から隣に住んでた人が急におかしくなって怖いです』、『最近近所のやつがおかしな事を言い出した』、『ご近所さんが突然亡くなることが多いのです。1週間で5人亡くなりました』、『急におかしくなって、その後死んでる人がいっぱいいます』っていうのが一カ所の目安箱にありました」
「おかしくなった人に、突然死が何回も起こる……次は自分じゃないかって怖いんだろうな」
「ええ……どうにかしたいのですが、原因もわからない。感染症なのか何なのかもわかりません」
「感染症だったらインフルエンザみたいに隔離して治療とか?でも原因が特定されないとなんとも」
「様子を見るしかないのでしょうか……」
アルベールは心配そうな顔をした。
画面の中の国に直接調べに行くことは出来ない。国の上層部の人たちへ指示は出せるが。
なすすべないアルベールは今後どうするかについて様子を見るように指示だけ出しておいたようだ。
「未知の病気だったら怖いわ」
「そうでないことを願います」
頭の片隅にこの件を入れて、この日は終わった。
ついに明日からゴールデンウィーク。
何も予定は入ってないが、たまには買い物と勉強しようかと考えつつ授業を受けた。
そして、また部活動という名の花の世話をする。
「最近クラシスの国、へんなやつが増えてるっぽいんだよな」
「どんな?」
「なんか急に移民がきて、そこだけまるで別の国みたいに隔離されてるみたいだわ」
竜之介のざっくりした説明に加えるように、クラシスが口を開いた。
「ある地域だけ壁を作って、外部との接触を断った。俺の国なのにそうじゃないみたいな……別の国が出来てるみたいになってる」
「クラシス様のお国がそんなことに……」
「みんなのとこは何もないか?」
「僕のところもちょっとおかしいです……」
クラシスの問いに答えたのはアルベール。
アルベールはしゅんとしている。
「急におかしくなって亡くなると言うことが何回も起きてるようなんです。様子を見るしかできないんですけど……」
「なーんか起きそうなんだよなぁ……」
「竜之介先輩の勘ですか?」
「この前は竜之介の勘が当たったからね」
嫌な予感がすると言って早く帰ったとき、光と竜之介は襲われて、狐面の男に遭遇した。
光はなんとなくだが、竜之介の勘は当たる気がしている。
「何があっても大丈夫なように、対策をしなくてはなりませんわね!」
「ならば同盟で一緒に対策を考えましょう!」
「そうとなりゃゴールデンウィークは集まらなだな!」
3人の王の話を聞いてると嫌な予感がした。その予感は的中する。
「竜之介、ゴールデンウィークも学校使えるんだよな?」
「そりゃ部活あるとこもあるし、申請しとけば使えるけど……」
「じゃあ部活ってことで対策会議するから頼む、竜之介!」
「おっけーとりあえず申請しとくわ」
クラシスの提案に王はうなずく。
どうやら王たちの中では集まることは確定したようだ。残りは契約者たちの同意を得るだけだ。
竜之介はもう乗り気だ。
「葵、よろしくて?」
「私、1日だけ友達と遊びに行く予定入ってるんだけどそれ以外でいいなら」
「ですって!その日以外は参加しますわ」
ヒリス、葵組もOKした。残りは光だけだ。
「光君、どうでしょう?」
「はぁ……仕方ないよね。俺が断っても多数決で負けるし」
「決定ですね!」
こうしてゴールデンウィークにはいつもの屋上で部活動兼対策会議が行われることになった。
今までずっと友達と一緒に放課後を過ごしたり、休日に会うようなことがなかった光にとっては何だか嬉しい気持ちが半分、面倒と思う気持ちが半分。複雑な気持ちではあるが、心が温かく感じた。
その光を見るアルベールも嬉しそうな顔をしていた。
こうしてゴールデンウィークの予定も決まり、国を守る方法を探る。
不安と希望をむねに、王と契約者は動き出した。
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