男はみんな狼なのよ?(6)

『カヤコチャン? いるよ、そこに』

 どうして、なんで、おしゃれして、遠藤なんかと一緒にいるんだ?

 瞬時にして疑問符であふれかえった渉の頭はパンクして、電光掲示板のように疑問文がスクロールする。


「どこにいるんだ!?」

『あ? れんが横丁の〈地中海食堂〉って店だよ、四月にオープンした。知り合いがやっててさ……』

「すぐ行く。動くなよ、そこから動くなよ」

 通話を切って運転席のドアを開ける。

「オレも行く!」

 俊が飛びついてきて、四の五のやりとりする時間も惜しくて彼を助手席へと押し込んだ。


 駅前にあるれんが横丁は、城下町ならではの放射環状型の路地を利用したレトロなモチーフの商店街で、主に飲食店が軒を連ねている。

 遠藤が言っていた店の名前は知らなかったが、狭いエリアだから行ってみればすぐに見つかるだろうと思った。


 お盆期間でどこも込み合っているだろうと、早々に空き表示が出ていたパーキングに軽トラを置いて道を急いだ。

 午後の商店街は人が多く、広くもない道幅のレンガ敷の小径を人にぶつからないよう気をつけながら店名を確認して歩く。


 ほどなく見つけて渉は足を止める。その立て看板の貼り紙に凍りつく。

 A4サイズのチラシには「おしゃれなイタリアンカフェでランチ街コン・参加者募集」の文字。黒板タイプの立て看板に貼られたその上部にチョークで「本日開催・貸し切り中」の文字。

 街コンだと!? 渉はくらりと倒れそうになる。


 街コンとはいうまでもなく、出会いを求める男女が集まるイベントだ。ここに茅子が、そわそわとおしゃれをして、いそいそとやって来ているというのか、そうなのか。


「あ、ほんとに来た。今頃遅いんだけど」

 ひょこひょこと店内から遠藤が出てくる。ショックのあまり渉はまだ言葉が出てこない、代わりに俊が遠藤に尋ねた。

「かやこがいるって聞いて来たんだけど。かやこは?」

「へ? 君だれ?」

「弟です」

「うそ、カヤコチャンの弟? カッコよすぎない? モテるでしょ?」

「かやこはどこ。呼んできて」

「カヤコチャンなら清水さんと帰ったよ」


「……!」

 清水の名前が出てきて更にショックで、反動で渉は我に返った。

「なんで清水さんまで」

「だから、頭数足りなくなったから職場の人も誘ってくれって頼まれて。ここ、中学の先輩の店でちょくちょく来てるから。たまーに開催してんだよ、街コン。小永井だって来てるだろ、ほら」

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