男はみんな狼なのよ?(5)
「俊くんは、進学するの?」
「ほんとは就職したいんだけど、まわりが大学行けってうるさい。かやこも、高卒の人とは一緒に暮らしません、とか。ひどくない?」
「行けるなら行っておいた方がいいよ」
「あんたは大卒?」
「一応」
「ふーん」
スイカを食べ終わった俊は椅子の背にもたれて渉を見上げる。明らかに値踏みされてる。
沈黙に耐えられなくなって、渉は思わず尋ねた。
「増田さんは今日はどこに行ったの?」
「は? 気になんの? ストーカー?」
眉毛を跳ね上げて睨まれてしまう。
違うんですけど、話題が他に思いつかなかったからなんですけど、気になってるのは事実なのですけど、それを言ったら後をつけたことがあるのも事実で、あれ、俺ってストーカーなのか、とまたもや渉は思考がぐるぐるする。
俊の視線が痛い。へんな汗がこめかみを伝い、渉は頭に巻いていたタオルを取って顔を覆った。
「……会社の人に呼ばれたって言ってたんだよな」
「え?」
「あんた知らないのかよ?」
俊は腕組をして思い出すような顔で空を見ている。
「特には聞いてないけど」
茅子を誘う会社の人間となれば、小永井の顔が思い浮かぶが、いや待てよと渉も思い出す。
「一張羅のワンピースに化粧道具まで引っ張り出して、すっげえそわそわしてたんだよな、朝かやこの家に行ったとき」
「ちょっと待ってよ!」
渉は思わずテーブルに身を乗り出して俊に詰め寄る。
「おしゃれして出かけるって、それってデートじゃないの!?」
ポカンと口を開き、直後に俊は目を吊り上げた。
「は? 誰とだよ? 誰がかやこをデートになんか誘うんだよ」
社内で茅子を狙っているのは清水だが、渉がもっと気になったのは遠藤のことだった。渉のところに何度も電話をかけてきた、あの用件が気になる。
「俺、電話を」
ジャージのポケットからスマートフォンを出し、その前に帰る挨拶をしなければと気を回すと、俊が心得たように丸山園長を呼んでくれた。
スイカをご馳走になったお礼と修理のお礼を言い交わして渉は〈ひまわり〉を後にした。
軽トラックの陰で改めてスマホを取り出し遠藤にコールする。見ると、ついてきたらしい俊が落ち着かない様子で荷台の後ろに立っていた。
『もしもし?』
通話に出た遠藤の周りは昼時に話したときのようにざわついている。どこか店内にいるのだろうか。
「あのさ」
額にじっとり汗を浮かせながら渉は尋ねた。
「今、茅子ちゃんと一緒だったりする?」
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