番外編 後編 大賢者ユキのユニバース大作戦!
「あのねリリアちゃん。 私、ノブユキごと魔王セレスにビックバンを放って、ノブユキを記憶喪失にするしかないと思うの。 作戦はそうね……ユニバース作戦って名前にするわ!」
「あのユキさん、いきなり何をいっているのですか?」
朝目覚めて早速の私の発言に、リリアちゃんがそんな疑問を口にする。
ふふ、でもそれは仕方ないわ、だってこの大賢者であるユキちゃんの考えだもの!
でも、ここはリリアちゃんにも分かる様な説明をしなくっちゃ、そうじゃなきゃ、賢者の名折れよね
「私理解したの、ノブユキって実は浮気癖がある事を……」
「へ?」
「まぁでも、私は分かるのよ。 ノブユキも男の子だしさ……。 だから記憶を消して再教育しなおしたほうが良いんじゃないかと思って……」
「あのユキさん……、一体何を言っているのでしょうか……?」
「ふふ、この話はまだリリアちゃんには早かったかな? これは高度な考えを必要とする天才的な賢者らしい結論なの! そう、その名も愛!」
「あの、全く言っている意味が分からないのですけど!? そんな親指立てて自信満々に言われても……」
ふふ、リリアちゃんはまだ若いから仕方ないわね、分からなくとも……。
この天才賢者のユキちゃんでも何かモヤモヤする部分もあるから!
まぁとりあえず行動するしかないわね!
「とにかく、行くわよリリアちゃん! ノブユキごと魔王をぶっ倒して、ノブユキを記憶喪失にして皆で幸せになるわよ!」
「ちょ、ちょっと待ってくださいユキさん!? どうしてそこまでノブユキさんの記憶にこだわっているのですか!?」
……こだわるのは当然よ。
だって、ノブユキったら、だって……。
「だってだって、ズルいじゃん! ノブユキ私以外の女性に赤面する事が多いし! 私だってクルシナさんみたいに胸はないかもしれないけど……、胸は程よくあるし! 私だってセレスみたいに色気はないかもしれないけど……程よく色気はあるし! そのグロリアさんみたいに魅力的な性格ではないかもしれないけど……けど……」
あれ……、私ったら他の人に比べると、長所無いんじゃない……。
あれ……。
「ゆ、ユキさん! だ、大丈夫ですよ、ユキさんの明るい性格、魅力的です! そ、それにユキさんは大賢者なんですから! だから、落ち込まないでください!」
「あ……」
そんな私に、慌てた様子でリリアちゃんが私を励ましてくれた!
そ、そうよね! 私、大賢者だもんね! そこが長所だもんね!
「ありがとうリリアちゃん! つい視野が狭くなっていたみたい……」
「いえいえ……はぁ良かった、なんとか落ち着いたみたいですね……」
ふふ、リリアちゃんにも心配かけちゃったわね……。
でも大丈夫、私はもう落ち込まない、だから!
「なら早速、ノブユキを記憶喪失にする為に出発しよう!」
「待ってぇぇぇぇぇぇぇぇ! ユキさん、だめぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
私は迷うことなく、ノブユキを記憶喪失にしセレスを倒す旅へと出発した。
リリアちゃんが足にしがみ付いているけど、これって運動になるかも!?
…………。
町の門をくぐり、私達はセレスの言っていた西のどうくつにあると言う、地底城を目指すことにした。
そして、その途中の草原を楽しくお話しながら進んでいた。
「ダメですからねユキさん! 記憶喪失にしようと言うのは絶対ダメですからね、ホントダメですからね!」
「ふふ、分かっているわ、リリアちゃん……」
「ユキさん……」
「つまり『やっちゃえ!』って言っているのね!」
「違いますって! ユキさん、ノブユキお兄ちゃんはそんな人じゃないと断言しますから! まぁちょっと大人の女性に弱いかもって思いますけど……」
へ? フリじゃなかったの?
……あ、そっか! こっちの世界の常識がここでも通じる訳じゃないよね!
えへへ、うっかりうっかり……。
でも……。
「でもリリアちゃん! 私はノブユキの彼女なんだよ、なのに私に対して一度も赤面しないしさ~、それって彼女に失礼だと思うの私!」
「ま、まぁそうかもしれませんが……」
「ならつまり、リリアちゃんも良いと思っているって事ね! じゃあセレスをぶっ倒して、ノブユキを記憶喪失にする旅再会~!」
「ち、違いますって! あ、ユキさん止まってください~!」
そんなやり取りをしながら私達が歩いていたその時。
「ふふふ……待っていたぞ、リリア……そしてユキ……。 魔王セレスの敵であるお前たちをこの先へ行かせる訳にはいかない……」
どこからともなく、聞き覚えのある様な無いような声が辺りに響き渡る。
あれ? どっちだろう?
うーん、分かんないや。
「こ、この声は……!」
「ん? リリアちゃん聞き覚えあるの!?」
「ユキさん、聞き覚えもあるも、これは……」
「これは……?」
「お母さまの声です!」
へ? あ! そうか、これクルシナさんの声だ!
あ、でも何で私達が敵なの?
そう思っている私とリリアちゃんの目の前に一瞬で現れたクルシナさんは。
「流石だな……リリア……」
と口にしながらスッと目の前に仁王立ちする。
「何故、何故魔王の手先に落ちたのです、お母さま……」
え!? クルシナさん、あのセレスの部下になっちゃったの!?
え!? ホントどういう事!?
「何故だと思うんだ、リリア……?」
「分かりません、お母さま……」
「簡単だ、リリア……セレスは私に美少年や美少女、そしてリリアそっくりの人形をくれた! それも舐めた時の味がそっくりなレベルの素晴らしい物をだ!」
「何言っているんです、お母さま……?」
あれ~何かリリアちゃんの顔が怖いんだけど~。
何か気持ちは分からなくないけど、その、今まで見た事無い恐ろしい顔だから、ちょっと怖いと言うか……。
「ふふふ、それにセレスはアタシに言った! 『欲望に忠実で良いんじゃない』とかそんな感じで! つまり、自分の欲求の思うままにペロペロしまくればいいのだと気づかせてくれたのだ!」
「…………」
何だろう、私。
すっごくこの場にいたくないのだけど……。
「ユキさん……」
「へ? な、な、な、な、何!?」
え、えーっと、その顔で私を見つめないで!
殺気満々のその顔で!
私とってもリリアちゃんの顔を見たくない!
「私……理解しちゃったんです……」
「な、何を~かな~……?」
「記憶喪失にしても良いって意味を……」
「えぇぇぇぇぇぇぇ! 何で、どうしてリリアちゃん!?」
「だって愛なんですよね……。 殺意が湧くほど重い愛…手n」
ど、ど、ど、どうしよう!?
リリアちゃんが珍しく怒ってるみたいだし!
と、とりあえず止めないと!
「ま、待って! もしかしたらクルシナさん操られているのかもしれないしさ! とりあえず一度落ち着こう! ね!」
「た、確かに! それだったら目を見れば一目で判断できます! もし操られているのなら、お母さま以外の魔力が……感じられませんね、お母さまからは……」
「当然だ! 私の意思でここにいる! 無意識にペロペロして何が良いんだ! ペロペロした時の幸福感が味わえないだろう!」
な、何で助け船を蹴り飛ばすのクルシナさん!
ほら、リリアちゃんが何かつぶやきだしたから、クルシナさん!
で、でもきっとまだ間に合う……ハズ!
ここは何とか目を反らさなくっちゃ!
「あのさ、その、き、きっとクルシナさん、あの極悪魔王のセレスに脅されているんだよリリアちゃん! きっと表向きに人形を貰ったからとか、そんな事を言っているんだよ!」
「は! そ、そうなのですか、お母さま!?」
「いや、素直に人形を貰えたからだな。 正直1メートル以内に近づけないのは正直辛かった……。 流石に匂いと覗き見だけで我慢するのは、3日で限界だった」
お願いだから助け船を沈めないで!
もう寒気が止まらないんだから私!
と言うか……。
「あ、あのさ……何かリリアちゃんの背後に薄っすら死神みないな人が見れるんだけどさ……、記憶どころか、命取りかねないんじゃないかな!?」
「良いんですよ……愛なんですから……」
あの、リリアちゃんが鬼神の様な形相を浮かべているんだけど!?
と言うか、ホント何、リリアちゃんの背後の死神みたいな人!?
と、とにかくクルシナさんに謝る様に言わないと!
「く、クルシナさん! リリアちゃんが今までになく怒っているみたいだから、リリアちゃんに謝ってくれると……」
「ふふ……、怒り狂うリリアもたまらないな……」
「ふふふ……、お母さま……消し炭になる前の言葉はそれでよろしいですか……」
ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ、どうしよう!
私、大賢者だけどお手上げ!
どうしよう、どうしよう……。
その時だった。
「ぎゃ!」
「間に合いましたね……。 ごめんなさい、クルシナさん……」
気が付くとグロリアさんが一瞬で、クルシナさんの背後から一撃を当て、そしてクルシナさんはバタンと倒れ込む。
どうやら気絶したようだ。
「ぐ、グロリアさん、どうしてこんな所に!? でもありがとう、おかげでリリアちゃんが何か恐ろしい事をしなくてすんだわ!」
「いや、その……セレスさんから連絡があったと言うか……『とにかく助けなさい! もしリリアがおかしくなったら私のプライドに反するの!』と魔法で私の頭に直接そう訴えてきたと言うか……」
「セレスが!? ちょっとどういう事なの!?」
私は驚きのあまり、考える前にそうグロリアさんに尋ねていた。
だって、あの性格性悪な痴女のセレスが、人助けをするって思えないから!
でも、グロリアさんが言い間違いとかする訳も無いし……、一体どういうことなの?
「その……まぁ、あのセレスさんは、あんな性格をしているのですが、ああ見えても、決して子供をいじめないと言うルールを持ってらっしゃって……。 なので、子供にはすごくいい人なんですよ! その、さっきも妹達から、美味しいケーキを貰ったと電話がありまして……」
へ? そんな風には見えないのだけど……。
魔王の癖に生意気よ、セレス!
そう思う私をよそに、セレスさんは、先ほどまでの恐ろしい表情から、下を向いて落ち込んだ表情のリリアちゃんに近づくと。
「大丈夫……大丈夫ですよ……」
優しく、そして力強く抱きしめた。
そしてリリアちゃんは。
「あ……」
嬉しいのか、その可愛らしい瞳から涙を流している。
あぁ、きっと愛を感じているのだなぁリリアちゃん……。
……でも。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! リリアを取られた~! 泥棒、グロリアの娘泥棒! ロリコン大魔王! 歩くエロチズム!」
「それって私じゃなくて、全部クルシナさんに返ってきますよね!」
「アタシは良いんだ、愛あるロリコンだから! だから何の問題も無い!」
「自身たっぷりで言う事じゃないですよね、クルシナさん!」
何か、グロリアさんが手足バタつかせてグロリアさんに文句言う姿が目に入りすぎて、何かその感動的なシーンに意識が行かないなぁ……。
と言うか、何で平然と復活してるの、クルシナさん。
ん?
「お母さま……」
「わあぁぁぁぁぁぁぁぁ……ん?」
あれ? リリアちゃん、どうしたのかな……?
そう思う私の前でリリアちゃんは抱きしめるグロリアさんの腕を抜け出し。
「……その、私が構ってあげなかったから、バカな事をしたんですよね?」
そうクルシナさんにため息交じりにそう告げ、クルシナも静かに首を上下する。
「全く……、今回だけですよ、お母さま……」
「……あぁ、すまない……」
「ほら、我慢できなかったのでしょう? 今日だけは思う存分なめていいですから」
そんな言葉を聞いたクルシナさんは。
「ホントか? ヒャッホォォォォォォォォォォ!」
そう言って喜びを声にしながら、リリアに飛びついた、そして。
「ぎゃ!」
「あ、ごめんなさいお母さま! 魔法を解除してませんでした……」
クルシナさんは透明な壁に阻まれ、滑り落ちる様に地面へドスっと音を立てて倒れ込んだ。
……あれ? よく考えたら私、今空気じゃない!?
面白いは面白いけどさ~、やっぱノブユキがいないと、ちょっと楽しくないかな、何か……。
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